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「空真さん、段々戦いに順応するのが速くなってきましたね」
「人は進化するんだよ」
というか慣れである。寒月と旅を始めてかなり経つが、その間空真は何度も襲われていた。それほど竜統計調査局の情報には価値があり、何より特別若い空真の舐められ度の高さが要因である。
前最年少合格者であり同僚の悠斗は本局にいるので全く狙われず安穏としていることだろう。やはり地方は治安が悪い。
ふと目をやると寒月が捕らえた男達から荷物を徴収していた。
「あーまた追い剥ぎしてる」
「人聞き悪いこと言わないで下さい、持ち物チェックです。・・・・・・焦って追って来たんでしょうね。胸ポケットにこんなものが」
チロりとポケットから出して見せたそれに、空真は瞠目した。
「これまた・・・・・・どっかで見た紛い物だ・・・・・・」
それは最初に訪れた街で見た、限りなく本物に近い竜のウロコの偽物。
「なるほど、この街に来てようやくあなたを付け回していたのが誰か分かりましたね。あなたに摘発された露天商の仲間、そして偽ウロコ作りをしている詐欺集団といったところですかね」
「傭兵雇って徹底して情報漏洩を防ぐほどだ、よっぽど資金繰りがよかったんだろう。それでもここでそのウロコと出会うということは、このフロレリア地区管内でその偽物が作られてるってことか」
「そうですね」
今まで捕縛した男達は何を尋ねても「知らない」「雇い主に頼まれた」の一点張り。そしてその雇い主を聞いても「よく分からない」だ。知らない人について行くなって子供の頃に親に言われなかったのか。
「そういや露天では偽物売ってるくせに、密猟に関してもやけに詳しかったよな。偽物作りだけじゃ飽き足らず密猟にも手を出したのか?」
「確かに」
「じゃあコイツらが竜殺しの一族なのか?」
突然寒月は冷たい目で空真を見た。
「この男が竜を殺せるように見えますか?」
空真は、鼻血を出しながら気絶して縛られる男を見やった。羽振りは良さそうだが筋力は無く、寒月にもあっさりやられていた。
一方竜は警備隊の手に負えない巨大な獣。
「・・・・・・見え、ない」
「ですよね。もし見えてたら見る目無さ過ぎて見捨てようと思ってました」
同僚に向かってなんてことを言うのだこの子は。
「私の勘ですが、この前逃げてた2人組の、特に男の方、かなり切れ者です。遠目からですが雰囲気が尋常じゃない。こんなクズ共とはレベルが違う」
「じゃあこのクズ・・・・・・詐欺集団は、竜殺しの一族が殺した竜を勝手に回収していると?」
「かもしれませんね」
なるほど、と空真は顎に手をやる。
「そもそも竜殺しの一族はどうして戦うんだ?」
「昔は竜退治で生業にしていたから・・・・・・でも確かに今は需要が無いですよね」
「まず竜を瀕死にさせられたなら、何故逃げていたんだ。まさか竜を誘導したのか?そしたら竜退治の仕事が戻って来る、とか?」
「いえ、それにしてはあの街では被害が少ない。それなら街の中央へ走るはずです。あの2人は別の門からむしろ外へ逃げようとしていた。それに竜は決して人に馴れることはありません」
「じゃあ何故あの男は竜に追われていたんだ?」
堂々巡りだ。何もかも問題は竜殺しの周りで渦巻いている。突如、空真は男と共に入っていた女の方を思い出す。
「もしかして追われていたのは女の方・・・・・・?彼女を庇ってすぐには戦えなかったのか?」
「それって・・・・・・」
考え込むような寒月。
「どうした寒月」
「実は文献では、竜殺しの一族と併せてもうひとつの一族が出てくるんです」
「もうひとつ?」
寒月の表情は暗かった。
「ええ。それはとても、非道で無慈悲な話です」




