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 ミラルディから移動した空真と寒月は、フロレリア支部の管轄地でとある調査を行っていた。


「この辺りですね、竜の死体が転がってるって通報された場所」


 地図を広げる寒月の後ろを歩く空真。普通は男女逆かもしれないが、適材適所、寒月の方が地図を見るのも山道を歩くのにも慣れているのだからしょうがないと、最近は開き直ってきた。


「最近竜の死体がよく見つかる呪われた場所の間違いだろ」

「明らかに人為的な傷が見つかってます。呪いとは考えにくいです。そもそも竜に呪いは効かないですし」

「ジョーダンだよ。どうせ反社会的勢力の新手の密猟だろ」

「だったらまだ分かりやすくていいんですけどね」


 寒月がポツリと呟いた。そしてこの発言がズバリ的中することとなる。


 報告にあった場所には明らかに動物が殺された血の痕と、ウロコが散乱していた。


「うーん、これは・・・・・・仕事の予感」


 問題はここにあるはずの竜の死体が無いことだ。実は運搬作業は手配中で、もうしばらくここに竜の死体が留め置かれているはずで、空真は寒月を護衛に検死にも来たのだ。


 しかし地面には竜の死体なんて見当たらない。誰かが竜統計調査局の手配よりも先に持ち去ったのだ。この辺りは警備隊が警邏けいらに来るのが難しい山地で、人影も少ないと油断していた。

 寒月が地面に落ちているものを指でつまんだ。


「剥げ落ちたウロコの欠片ですね」

「綺麗なものだけ回収したか。売り物にならないものは置いていくなんてな。殺すなら全部回収していけよな」

「でも変なんですよね、ここ3ヶ月の内こうした竜が死滅している痕が見つかった事例は3件です。また竜の死体が見つかり通報されてから、警備隊が来るまでに何者かに回収されたのは2件。でも普通、殺してからさっさと回収しておけばいいのに、死体が転がってると通報があってから回収されてます。つまりタイムラグがあるんです」

「殺したのと回収したのが別ってことか?」


 そうすれば殺し役が回収役に連絡するのが何らかの理由で遅れて、先に警備隊に通報されたという辻褄が合う。


「多分そうです。あとここにあった竜、通報された時の証言によると刃物で殺されてるんですよね」


 刃物での殺傷。硬い鋼のようなウロコを持つ竜が、刃物ごときで殺せるものか。しかしその例外は確かに存在した。空真はミラルディの一件が頭をよぎる。


「・・・・・・どっかで聞いた話だな」


 嫌な感じがする。最近の出来事は全てどこかで繋がっているような気がしてならない。まるで長く細い糸をたぐっているような気分だ。


「このまま放置するとこの辺り一帯の竜が密猟されますね」

「正直分かってるだけでも5匹、いや今回を含めて6匹も竜を回収し損ねているのは調査局の失態だ。そもそも竜をここまで的確に殺せる前提じゃないんだよな。知ってるだろ、調査局が竜を生け捕りにする時に使う毒の威力」


 寒月は神妙な面持ちで頷く。


「知ってます。どんな生物にとっても致命傷になるほどの猛毒ですからね」

「そ。毒自体激物指定されて国の機関以外が扱うのは違法とされている。それで弱る程度の生命力。だから毒物ならまだしも、こんな風に刃物で竜が大量密猟される前例は無く、今も対応に追われてるとさ」

「とさ、じゃないですよ。調査局員はあなたなんですよ」

「分かってるけど、原因を究明するにしても手がかりがなぁ」


 寒月は腰の剣の柄に手をかける。


「それならば───」


 そして勢いよく件を抜き、振り向いて剣を後ろの人間にかざした。


「───とりあえず後ろの方々に話を聞きましょうか」


 一切表情の無い顔で男達を切り倒していく。男達は武装をしており、数は6人ほど。空真はかばんを頭の上にして、身を屈めて観戦していた。


「警備隊の応援呼んでこようかー?」

「大丈夫です」


 余裕と言わんばかりの口ぶりだ。空真は苦笑いする。


「おーこわ」


 そしてほどなく、襲って来た(先に手を出したのは寒月だが)を全員打ちのめし、捕縛した。

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