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二拾壱:隣デハ

「へっくし」

 吹き寄せる寒さにコートの襟を欹ててずるずると鼻を鳴らす。

 結局あのあと、冷え切った体をまたシャワーで温める気にもなれず、そのまま水気を切ってパジャマに身を包んだものの……案の定風邪を引いた。熱は少しあるけども、ふらついたりしないしまだまだ大丈夫。そう思って軽めの朝食をとったあと、棗を起こしに部屋に行ったものの、

「棗さん、朝ですよ、起きてください」

 軽くこんこんとドアをノックしても返答がない。それはいつものことだから別にいいとしてドアを開けて、中の惨状に眉を顰める。

 (一晩で何人連れ込んだんですか…)

 床に散らばる衣類を、ばっちぃものと見なしてつま先で蹴って壁際に寄せる。下着に制服にジャージに…ざっと3人分ぐらい? 全く、何やってんだか……そう思いつつベッドまで歩いて行って違和感に気づく。この惨状を作り出した張本人が部屋のどこにも居ない。

 おかしいな……棗が先に起きてることなんて滅多にないのに。

 そう思いつつ床の服だけでもまとめようと、手袋を取りに戻ろうとするとベッドの方でうめき声が聞こえてきて、

「……あれ、あさ……?」

「あれ……?」

 妙に布団が膨らんでいるなと思ったら二人で寝ていたようで、それぞれ同時に体を起こす。そしてお互い見つめあって、

「「きゃぁぁぁ!?」」

 うるさいですね朝っぱらから…

「な、なんで先輩が棗さまの布団に!?」

「そ、それはこっちのセリフですわ!?」

 棗のベッドの上でふたり、裸のまんまギャァギャァと騒ぎあう。片方は見覚えがないけれど、もう片方は顔だけなんとなく見覚えがあって。とりあえずこの惨状のわけだけでも聞いておきますか……

「おはようございます、ふたりとも」

「「へ?」」

 全く同じ動きでこちらを見て、同時に布団をひっかぶる。

「な、なななななななつめ(さん(さまぁ))!?」

「落ち着いてください、私は妹の司です」

「つ、つかさ、さん…?」

 恐る恐る伸ばしてくる手を嫌そうに振り払って問いかける。

「一体何があったのですか?棗のしでかしたことに対してはあとでキツく問いただすつもりではありますが…」

「そ、それは……」

 お互い視線を伏せて言い淀む。自分の睦言を誰かに聞かすというのは精神的につらいものだとは想像がつきますが……棗は一体何をしでかしたんだ……

「わかりました、深くは聞きません。あとで棗を絞めあげておきます。それと……服は適当に集めておきました。もう朝ですのでそこのシャワーを使って、それぞれ自分の為すべきことに戻られるのが良いかと」

「わ、わかりました……」

 はぁ……なんでボクが棗の食べ残しの後片付けをしなければならないんですか……

「あ、あの……」

「まだ何か?」

「あ、いえ……その、ほんとに棗さまじゃないんですよね?」

「ええ」

 今までに幾度となくされたその問いかけを、今度ははっきりと自信をもって言い返す。

「私は泉見司、泉見棗ではありません」

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