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創生の姫と最強の守護者  作者: 早瀬 翔太
序章
7/63

[友達]

タイトルが迷走中です。

考えれば考える程、迷走しています。


早くビシッとタイトルを決めたいものです。

「経験値?」


 やっぱり知らなかったか。

 現代のコアがどんなものか知らない俺が簡単に機能を掌握出来たのには理由がある。


 コアは契約者を通じて経験したあらゆる事柄を経験値として蓄積し、それらを元に最適化した情報を機体に反映させる。

 それを繰り返すうちに契約者と機械人形との繋がりが強くなる。

 要は使えば使うほど、契約者の癖に合わせて性能を十二分に発揮出来る様になるのだ。


 まだ一度も動かした事がないまっさらな状態のコアを掌握するなんて造作も無い。


「と、まぁこんな感じだ。授業で習わなかったのか?」

「そんなの習わないよ。前に言ったと思うけど、そもそもコアは量産出来る様になった今でも、ほとんどの機能が解明されていないの。

 量産と言ってもオリジナルのコアをコピーしただけだし。

 だから機体をカスタマイズすることはあってもコアそのものはどうしようもないの。

 汎用コアを使っているなら基本性能はどれも同じだもの」


 なるほど。そう言えばコピー品だって言ってたな。

 しかし、そうなると俺が知っている時代から思った程、技術は進んでいない事になるな。


「ねえ、アレス」

「ん?」

「アレスはどうして自由に話したり、動いたり出来るの?その、経験値が関係してるの?」

「知らん」

「え……」


 ロアの疑問はもっともだ。

 記録データがほとんど消えてしまってるが、自由意志とも呼べるものは確かに残っている。

 だけど、それを一番疑問に思っているのは俺自身なのだ。

 それがロアの言うように経験値によるものなのか過去に俺が契約した人物の影響なのか分からないけれど、データが消えた今となっては、いくら考えたところで分からないのだ。


「ロア、俺の記録データはほとんど消えてしまってるんだ。説明してやれるものならしてやりたいが俺自身さっぱりなんだよ」

「そう、なんだ」


 ロアは心配そうな顔で俺を見る。

 本当にころころと表情の変わるやつだ。


「心配するな。出来る限りのことはするさ」


 そう、俺はロアに協力するって決めたんだ。

 俺自身、今はボロボロだけど修理すれば良いだけだしな。

 おっと、そうだ協力するって何をどう協力すれば良いんだ?

 模擬戦がどうとか言ってやつか?


「ところでさ。遺跡を出る時、俺に協力して欲しい事があるって言ってただろ? あれって何をしたら良いんだ?」


 ロアはなんだか気まずそうに俺を見て話し始める。


「実は……」


 何やらモジモジしながらゆっくり事情を説明し始めた。

 ロアの話を纏めるとこんな感じだ。


 機械人形を自作したまでは良かったが、自信が無くて一度も動かした事がない上に、アドバイスをくれそうな相手もいなくて最終調整に苦戦していたらしい。

 そんな時に出会ったのが俺だった。

 身体を欲しがっている俺に自作の機械人形を渡す条件として、最終調整とアドバイスをして欲しかったのだそうだ。

 ところが、それを言い出す前に俺が外部から機械人形を完全に掌握、かつ自在に操って欠点まで指摘してしまったものだから言い出せなかったとのことだ。


「なるほどな。本当に自信が無いんだな」

「うっ……」


 自分の夢をはっきり見ているくせに自信の無いロア。

 だけど、そんなロアを俺はもう気に入ってしまったのだ。

 臆病な癖に大胆で、ころころ変わる表情は見ていて飽きないし。

 何より時折見せるあの真剣な眼差しに惹かれてしまった。


「馬鹿だなぁ。こんな程度で身体を貰う対価になるなんて思っていやしないさ。言ったろ? ロアに協力するって。

 それに、新しい名前まで付けてもらったからな。これからもよろしく頼むぜ、相棒!」

「うぅ……」


 ロアは目に涙を溜めて俺を抱きしめると、そのままわんわんと泣き始めた。

 まったく、感情の変化の激しいやつだ。


「うあぁぁぁ、よろじぐアレズぅーーー!」

「おう!こちらこそだ!って、鼻水を拭け!」



 しばらく泣きながら俺を抱きしめていたロアが落ち着いて来た頃、出かけていた爺さんが帰って来た。

 何処に行っていたのだろう?畑か?


「ほう、遂にアレを動かしたのか。なんじゃ、何を泣いておる?」

「おじいちゃん! アレスがね! アレスが私の友達になってくれたの!」


 爺さんに気付いたロアは俺を機械人形から取り外し天高く持ち上げると嬉しそうに爺さんの元へ走って行く。


(子供かよ。ああ、子供か)


 友達? 相棒って言ったんだけど、嬉しそうだし、まあ良いか。

 持ち上げられた俺はぐるぐると回る景色を眺めながら、やたらと嬉しそうにはしゃぐロアに身を任せていた。


「なんと! 遂に、遂にお前にも友達が……!」


 な、何だ?ロアの報告に涙を浮かべながら感極まるという様子の爺さん。

 そのまま嗚咽を漏らしながら、近付いて来たロアを抱きしめた。

 抱きしめ合う爺さんとロア。

 そして二人の間に挟まれた俺。


 ロアは良いけど、ガタイの良い爺さんに抱きしめられると正直気持ち悪い。

 感触は分からないけど気分の問題なのだ。


 友達というか相棒のつもりだったんだけど、ロアと良い爺さんと良い、このリアクションは何だ?

 友達出来たくらいでそんなに喜ぶなんて大袈裟じゃないか?

 そこまで考えてある事に気付く


「なぁ、もしかして友達いないのか?」


 俺の一言にビクリと体を震わせるロア。

 どうやら図星だったらしい。


「い、イルヨ?アレスは友達だもん」

「いや、俺以外の人間の友達はいないのか?」


 ロアは目をそらすと遠くを見つめて涙を堪えいる。


「貴様ァ!!! 儂の可愛い孫をイジメるなら友とて容赦はせんぞ!」


 いやいやいや、なんなんだよ。


「分かった分かった! もう聞かないって!」



 何となくこの二人のことが分かって来た気がする。

 ロアは皆んなに馬鹿にされてるみたいな事言ってたしな。

 学校で友達出来なくて独りぼっちだったのだろう。

 多分、そんなロアを爺さんもずっと心配していたんだろうな。

 とは言えこの状況、何か話題を変えなくては気まずい。


「そ、そうだ!ロアの作った機械人形の欠点も分かったし、模擬戦とやらまでに改良すれば良い線行くんじゃないか?」

「欠点とな? あの機械人形のコアはまだ新しい。欠点を探る程には動かせぬはずじゃが」


 爺さんの口振りからするとコアの性質について気付いているようだ。

 ロアは知らなかったし、学校でも教えていないんだよな?

 長く生きているんだから知っていてもおかしくは無い、か。

 知っているならロアに教えてやれば良いのに。


「何だよ。爺さんはコアの性質について知ってたのか。ロアは知らなかったみたいだぞ?」

「そうじゃったのか、てっきり学校で習っておるものと思っておったわ」

「アレスにも言ったけど、そんなの習わないよ?コアは今の技術じゃそこまで解明されていないもの。

 おじいちゃんはどうして知ってたの?」


 おっ。それは俺も気になってた。

 機械人形技師学校でも教えない様な事を何で爺さんが知っているのかを。


「え、あ、いやいや、アレじゃよ!農作業用の機械人形にもコアが使われておるからの。使っている内に気付いたんじゃよ。こう、馴染むというか、次第にしっくりくる感じじゃ。儂が気付くくらいじゃから、その程度の事、学校でも教えておると思ってな」

「ああ、なるほど。おじいちゃん新しい農作業用の機械人形を使う時、いつも使いづらいって言ってるものね」

「そ、そういう事じゃ」


 一応話の辻褄は合ってるけど、なんか怪しいんだよなぁ。

 爺さんとは思えないガタイと良い。コアの知識にしてもそうだ。どうも土いじりが趣味の老人って感じじゃないよな。


「わ、儂は昼飯の準備をしてくる。出来たら呼ぶからの」


 爺さんはそう言い残すとそそくさと家に入って行った。

 怪しい……

 これからは爺さんの言動には気をつけておくか。


 ロアの作った機械人形を片付け終わった頃、爺さんが呼びに来た。

 俺は食事の必要が無いので、テーブルの隅で二人が食べ終わるのを待つ事になった。

 食事を始める前に爺さんがまた魔力を補充してくれたので俺のコアは魔力満タンだ。

 契約者でも無いのに気軽に魔力を補充するんだから、この爺さんやはり侮れないかも。

 いや、もしかしたら農作業用の機械人形に補充するのと同じにしか思っていない気もするが。

 お腹いっぱいだし、気にしないでおこう。


 二人の食事は特に会話も無く淡々としていた。

 それは別に良い。

 爺さんの教育方針かもしれないし。

 しかし、気になる事が……


(食べ方もそうだけど、使っている食器も庶民的な家庭には似合わない豪華な物使ってるんだよな。派手って訳じゃないけど、どれも高そうだ。

 ロアは機械人形のパーツを買うお金が無いって遺跡で言ってたけど、あれは小遣いが無いってだけで、もしかして爺さんは金持ちなのか?

 でも、趣味は土いじりって言ってたしなぁ。

 分からん!しかし、暇だ)



 退屈になった俺は模擬戦とやらの話題を切り出してみる事にした。


「ロア、模擬戦までにあの機械人形を改良するんだろ?俺の予測だと調整込みで十日ほどかかると思うんだけど、模擬戦はいつあるんだ?」


 黙々と食べていたロアの手が止まる。


「あ、明日」

「明日か、今から作業を始めて……って!

 はあ??? 明日!? そんなのどうやったって間に合わないぞ!」


 またロアの目が泳いでいる。

 何て分かりやすいんだ。


「ん? あの機械人形で模擬戦をやるのか?

 しかし、明日とはな流石に無理じゃのぅ」


 ロアは家で学校の事を話さないのか、爺さんも知らなかったらしい。

 模擬戦と言うからには、相手がいる。

 今日みたいに動かない巨木が相手では無いのだ。

 正直、今のままの機体では厳しい。


 今直ぐにでも改良すべきだが、時間も無い上に更に問題がある。

 あの機械人形のコアには経験値がほぼ無い。

 明日が本番となると、とても今からでは間に合わない。無理に機体だけ調整してもコアが機体を制御仕切れない可能性が高いだろう。

 それなら寧ろ下手に弄らない方が良い。

 それよりも、今の機体構成のまま少しでも、あの機械人形を動かして経験値を稼ぐ方が何倍もマシだ。


 あの遺跡にパーツを探しに来るくらいだ、何もしていなかった訳では無いだろうけど、ロアは勝つ気があるんだろうか?


 あまりこの手は使いたくは無いがーーー


「仕方ない。今からじゃ何をやっても中途半端になってしまう。明日の模擬戦は今日みたいに俺が代わりにあの機械人形を動かしてやるよ。

 何処までやれるか分からないが、このままやるよりマシだろ」

「それはーーー」

「その案は却下じゃな」


 爺さんはロアの言葉を遮って俺の提案を却下した。

 だが本番は明日。

 ロアが勝つ為には俺があの機械人形を操る以外には万が一にも勝ち目が無いだろう。

 俺は他の生徒達の機体の事は知らないが、あの機体では武器を持たせた非戦闘タイプの機械人形にすら勝てないかもしれない。

 だというのに俺の案は却下された。

 さて、何がダメなのか聞かせてもらうとしようか。



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