51話目 リーシュの修行2
「点灯。……あと30回ぐらい、かしら?」
学校で教えてもらった点灯。
お手軽で魔力を考えれば丸一日使い続けられる。
今回は全力で1分間使い続けるのを1回と考えている。
ようするに30分間全力で使い続けられる。
「相変わらず眩しいな」
「だって全力でと言ったでしょ?」
「こんな魔法をここまであげる意味はないのだがな」
ただの光る魔法。
洞窟で使うにはもってこいな魔法である。
でもこの明るさなら直径100メートルぐらいの部屋を明るくさせることができるぐらい。
たしかにここまであげなくてもよかったかもしれないわ。
「それと『ぐらい』とはなんだ。もっと細かく言わないと次に進めぬ」
「32回よ。これがあと32分続くわ」
コツはつかめてきた。
この魔法ならどれぐらいかわかる。
「……うむ、あっているな」
「わかるの?」
「そういう魔法があるからな」
そんな魔法があるとは。
私でも戻れば使えるのかしら?
とりあえずこの魔法はもういいよね。
「汝が今使える魔法で普段使わない魔法はどれだ?」
「えっと、自動生成魔法かしら?」
「初めて聞くな。どこか特別の人種の魔法か?」
「賭けごとが好きな人の魔法よ。運要素はあるものの、たまに強い魔法がでてくるわ」
使う魔力は一定だが、ただの水がでる魔法から水竜まで。
ただ強い魔法ほどなかなか出てこない。
これを覚えるならほかの魔法を覚えたほうがましと言われるほど。
「ではそれは何回使えるか?」
「55回ぐらいね」
「答え合わせとしよう。1回見せてくれるか?」
そんなことでわかるのかしら?
ここまでできるようになっているなんて驚きだわ。
「いくわよ。自動生成魔法」
「……ふむ。それぐらい使うのか。ならあっているな」
使ってみたものの、やはり使えなかった。
結果は木の棒が生成されただけ。
まあ物理攻撃ができるって考えればいいかしら。
「でもなんでそこまでわかるの?」
「もともとある魔力を見る魔法と魔法を使ったときの魔力を見ることができる。2つともほかの魔法に比べて神経質でしかも難しい魔法だ。使っている間はほかの魔法なぞ使えぬほどにな」
そんな魔法だったの。
それなら優先して覚える必要はなさそうかな?
でもサポート系になるなら覚えてもいいかも。
「ともかく今回の段階は終わり。次の段階に行くぞ」
「はい!」
「次は使いたい分だけ使う段階だ」
「それを覚えれば最後の魔法を覚えるだけ?」
「ああ。といっても一番の問題はその魔法が使えるか使えないかだ。前段階まで順調だったからこの段階もいけるだろう」
それなら一安心だわ。
でもいち早く取り戻したいからがんばらないと!
「使う魔法は火の魔法だ」
「なんで火なの?さっきの点灯はだめなのかしら?」
「点灯ではなく火のほうが差ができやすい。少し見せよう」
そういうと木々がない少し開けた場所へと来た。
「ではいくぞ。火炎」
ラグドラーグさんは火の魔法を使った。
これは私でもまだ使える魔法の一つ。
それにしても少し変だわ。
「なんでそんなに火が小さいの?」
「うむ。汝にはわからぬが今は温度が低い。バランスを取りづらいためこうして小さくしている」
「熱くないってこと?」
「火だから暑いに決まっている。調理で言う弱火程度だ」
この魔法は名前通り炎をまき散らす魔法。
普通に使えば人なんて燃やしつくすこともできる。
「知らぬだろうが、調整をすればこのように小さくしたり、このように」
「あ、あつい!」
「地面に近づけると、ほら」
地面はぶくぶく言いながら溶けて行った。
火炎程度なら地面を溶かすほどの火力は出ない。
なんでそこまで火力が上がったの?
「火の魔法は複数ある。たとえば火の子と火炎では威力が全然違う。ただもともとは同じ火の魔法」
「でも見た目が全然違うわ」
「そうだ。遠くの国では鬼火という魔法がある」
「知っているわ。友達が使うわよ」
「そういえばいたな。その鬼火は形が違うだろう?」
「そりゃあ全然違うわ」
「そう。もともとは火だが、火の魔法はあくまでも火。違う魔法に見えるがそれは形を変えたり速度を加えたりするだけ」
要するに火は結局火。
上位互換の魔法は使う魔力が変わるだけ。
おそらくそう言いたいんでしょう。
「なんとなくわかったわ。それでどうすればいいの?」
「火炎を使い、言われた火力にせよ」
魔力の調整のためにはいい魔法ってことね。
……点灯でもよかったと思ったけど、まあいいわ。
「まずは試しに、火炎」
「普通だな」
「そりゃあ普通よ!」
いきなり何を期待しているのよ!
ずっと使わなかった魔法だったのだから試し程度のつもりなのに。
「ほれ、試しに弱くやってみい」
「火炎!」
「力んでいるぞ。ほら火が強い」
野次が飛んでくる……。
前もそうだったけどだんだんとこういうことが増えてきた。
ギャップがすごいわ。
数日間、野次が飛びつつも試行錯誤で見事調整可能なところまで。
ラグドラーグも「ここまでうまくいくとは思っていなかった」とつぶやいていた。
……………
………
…
「おかえりなさいませ、魔王様」
「おいおい、魔王とは呼ばないでくれって言ったろ?カノン」
「しかし、私たちはあなたの手下。ですから――」
「わかったわかった!好きにしろ」
「ありがとうございます」
空が暗黒に染まる下にある城。
魔王と呼ばれるザルクがいた。
「それで成果はどうでした?」
「それよりほかの六大悪魔は?」
「未だに調べております。呼び戻しますか?」
「そうしてくれ。集まり次第話すことがある」
「かしこまりました」
ザルクはそういうと歩を進め、自室へ戻った。
「ようやく見つけた。うるさいカトンボ達のせいで遅れた」
ザルクは一枚の紙を手にした。
そこには一人の少女の絵が描かれていた。
「まさかこんな娘がカギとなるとはな……」
「魔王様」
「入っていいぞ」
「失礼します。六大悪魔がそろいました」
「早いな。飛んできたのか?」
「はい。声をかけたら皆、即座に集まりました」
「いい奴らだな。じゃあいくか」
カノンが魔王の部屋へ訪れ、二人は会議室へと向かった。
「よくみんな集まってくれたな」
部屋には大きな円卓があり、すでに5人座っていた。
ザルクはその中の上座へ座った。
「まずみんなに見てもらいたいものがある」
そういうとさっきの紙をカノンへ渡した。
カノンはその紙を複製させ、皆へと配った。
「そいつがカギだ」
「こんな幼い子供がですか?」
「そうだ、カノン。殺すのは簡単だが、絶対に殺すな。生きて連れてこい」
「精神支配をかけるのはだめなんしょうか?わっしはそのほうが楽だと思うので」
「駄目に決まっているだろう。わざわざ殺すなと言われているのだぞ」
「ガジラディアの言うとおり、精神支配もだめだ。すまんな、シュリア」
「いえいえ、勝手なことを言い出して申し訳ありません」
ここでは誰もザルクへ歯向かわない。
質問があっても質問するだけ。
皆、ただザルクの命令に従うだけだった。
「魔王様、この子供はどこに?」
「学校にいる、ということは分かっているが今は休暇らしい」
「休暇、ですか?」
「学校で勉強ばかりだと気がめいるから休みを与えているんだ」
「ではすぐに探しましょうか?」
「いや、まだいい。終わるのを待とう」
「では帰ってきたらすぐに行きますか?」
「ああ。誰か行きたい者はいるか?」
「……俺が行く」
「アメグラか。いいだろう、ただし暴れすぎるなよ」
アメグラ。
ここにいるのはおかしいと思うほどの赤髪の青年。
この中で最も若い悪魔だ。
「では頼んだぞ」
「わかりました」




