17話目 新しい魔法覚えるよ
「ジルー!起きてー!」
「ん~?」
あれ?
もう朝?
さっき寝たばっかりじゃん。
「起きろー!」
「まぶしっ!」
なんだ!?
絶対今の朝日とかじゃないだろ!
「…何しているんだ?」
「先生が使っていた魔法!」
「お、おう。でもまぶしいからこっち向けないで」
「起きたらやめるよ!」
しゃーない、起きるかあ。
「シロ、今何時?」
「えっと…あともう少しで授業始まるよ!」
「嘘だろ!?」
やばいやばい!
このままじゃ遅刻だ!
「シロ!準備は?」
「もちろん!」
「よし!」
「終わってない!」
「今すぐ用意しろー!」
こっちに来てからの初めての寝坊。
目覚まし時計とかないから!
ないから寝坊しただけ!
*
「「おはようございまーす!!」」
「おはよう。二人とも珍しいわね」
「あ、あははっ…」
教室へ向かう廊下。
ユリ先生が目の前で歩いていた。
これはセーフなのでは?
「先生見てみてー!」
「あらっ!もうできたの?」
「うん!頑張った!」
「すごいわー!」
そういえば俺を起こすときに使っていたな。
というかもうできたのか。
「じゃあ教室へ行きましょうか」
「「はーい!!」」
*
「おはようございまーす!」
「「おはようございまー…す?」」
返事がない。
いないわけじゃないけど何かやっているな。
「3人とも何をやっているの?」
「ふっふっふっ」
「シロ、ジル。これを見てみろ!!」
「「おおぉ!」
クロもガウもしっかり点灯を使えている。
まさかシロだけじゃなくてみんなもか。
俺よりも早い…かもしれない。
「これでみんな出来たのね!」
「シロもできたの?」
「できたよ!ほら!」
「うわっ!」
「まぶしい!」
それ目に悪いから人に向けちゃだめね。
おまけにめちゃくちゃ明るいからさ。
「それにしても二人とも早かったね」
「リーシュちゃんのおかげよ!」
「教えるのすごく上手だったんだぜ!」
「ふっふーんっ!」
うわぁ。
この神様すげえどや顔している。
こっちに来てからほんと人が変わったな。
肩の荷でもおろしているのか?
*
「じゃあ次の魔法を覚えましょうか!」
「「なになにー?」」
「「「どんなの?」」」
「それはこれよ!」
「神の怒りを触れるものに罪あり!雷撃!」
「「「「おおー!!!」」」」
「……」
「あれ?どうしたの?」
リーシュちゃん、驚かないの?
雷の魔法でしかもかっこいいんだよ?
クロも見ているし女の子に興味ないってわけじゃなさそうだけど。
「あれ、けっこう難しい魔法なのよ?」
「どういうこと?」
「魔法って危険なほど使用する難易度があがるの。威力は見たでしょ?」
見たけど…。
なんか用意した人形が黒焦げになっているし。
人に当たったら死んじゃうね。
「どう見ても危険でしょ?この先生どうしたいのかしら…」
「せんせー!なんでそんな危険な魔法を選んだんですかー?」
「ちょっと!」
何か聞いたらまずかった?
危ないならやめといたほうがいいと思うけど。
「そうね…やっぱやめたほうがいいよね」
「かっこいいけどちょっと怖いよなー」
「ねー」
ガウもクロも同意。
やっぱ危険が少ない方がいいよね。
「じゃあこれはどうかしら?ちょっとジルくん来てもらえる?」
「え?はい」
「痺れろ!麻痺!」
「うぇっ!?」
全身にある神経がプツンッと切れる感覚がした。
あぶねぇ!
このままじゃ倒れちゃう!
「おっとっとっ」
「ムフッ!」
「ああーー!!」
…やわらけぇ。
生まれて初めての至福の中に入ったかも。
親とかを除いてね。
「せんせー!」
「あっ、ごめんね!急に受け止めちゃったから」
「いえいえ!むしろ――」
「むしろ?」
「いえ、なんでもないです…」
あぁ…。
至福の時間がぁ…。
「とまあこれならちょうどいいじゃないかしら?」
「急にジルが倒れたみたいだけど何の魔法?」
「麻痺させる魔法よ!敵を捕まえるときに便利だわ!」
だから神経がきれた感覚だったのか。
急にやられたからびっくりしたよ。
意識があったのがまだよかったわ。
「最初にやってもいいー?」
「ええ!いいわよ!」
あれれ?
なんかシロの笑顔が怖いよ?
どうしてだろう?
「ジル…」
「ど、どうした?」
「さっき先生に触ったバツ!痺れろ!麻痺!」
「ギャー!!」
もう麻痺じゃなくてただの電撃!
さっきは段々痺れる感じはあったけど今はただただ痛い。
俺が至福に感じることをどうして嫌うのか…。
「もももももしかしてまたあの場所に行きたかったとか?」
「全然ちがう!麻痺!」
「アババババッ!」
「シロちゃん!ストップストップ!」
あぁ、なんか段々視界が明るくなってきたよ…。
この感覚二度目だなぁ…。
(大丈夫よ。私が近くにいる間は助けるから)
(これって)
(そうよ。私がまだこっちに来る前に使っていた会話手段よ)
(でもなんで?)
(ジルくん、今あなたは冗談なく死にかけていたのよ)
(…ありがとうございます)
わざわざ助けてくれたのか。
本当にありがたい。
それよりシロは容赦ないな。
死にそうな感じはしていたけど本当に死にかけていたのか。
…もう死ぬ感覚を味わいたくない。
「ふぅ…ふぅ…」
「お、落ち着いたかしら?ジルくんも大丈夫?」
「な、なんとか…」
「よく耐えたわね」
なんとかじゃないけど。
本当に死にかけていましたなんて言えないしな。
リーシュちゃんのこともばれちゃいそうだし。
*
「本当はこんなに力いれちゃだめよ?たまたまジルくんが頑丈だったから」
「「「「はーい!」」」」
はーい!じゃねえよ!
特にシロ!
しかもちゃっかりリーシュちゃんも返事してるし!
もう嫌だ…。
ここにいる人達が怖く見えてきた。
深夜テンションに身を任せて書いちゃいました。