第17話 『 後見人 』
それは6月も始めの頃。
いつものように図書館閲覧室で勉強をしていた時だった。
突然同室のドナ先生から話が始まった。
「…そうだ、アヤも一緒だから丁度良いわ」
同じテーブルで適当に本を読んでたアヤ姉も顔を上げた。
「アキヒト…もし望むなら、お父様に後見を頼んであげようか?」
「後見…すみません、よく分からないんですが」
「後見人のことよ、分かり易く言うと後ろ盾。
貴方って、この世界じゃ身寄りも何も無い一人でしょ?」
「はい、自分は一人ですが…。
後見人が居ないと、何かマズいんでしょうか?
特に今は何の不自由も無いんですが…」
「今はね。
けれど、これから何かするなら必要になってくるわよ?
学校へ入ったり、働き口を見つけたり…。
後ろ盾の名前が無ければ、人と会うのも難しいわね」
つまり後見人とは身元保証人と考えて良さそうだ。
「そ、そうですけど…僕には必要無さそうですが」
「私、前から考えてたんだけど…アキヒトは学校に通うべきだと思うの。
そうなった場合、必要でしょ?」
「え…僕が、この世界の学校ですか!?」
「勉強で分からない所が有れば、私が責任もって教えるわよ。
けれど社会性は、多くの人達と集団生活しないと身に付かないわ。
だからこその学校よ」
そしてアヤ姉もドナ先生の言葉に賛同してきた。
「私もそう思うわ。
こんなところで寂しく悲しく勉強するより、学校に行くべきよ」
「寂しくも悲しくも無いわよ!」
「は…はは…それならドナ先生も学校に行かないんですか?」
「私に必要とされるのは研究者としての社交性ね。
礼儀作法なら幼い頃から習ってるわ。
大学では一番年下だけど、回りとは上手く付き合ってるつもりよ」
自分の今の状況を考えてみると、会話できる人達は限られている。
もっと多くの人と知り合うべきかもしれない。
ドナ先生の言う通り、社会性を身に付けるには必要だろう。
「学校へ行くとしたら、もう少し基礎学力を付けてからね。
でないと授業に付いていけないもの。
だからまだ先の話だけど、早めに後見人をと思ったのよ」
「それは良いんですけど…。
僕なんかの後見を引き受けてくれるんですか?
だって、手違いで呼ばれた勇者候補ですよ?」
「今まで傍で見ていて、アキヒトの人間性は理解したつもりよ?
身体は小さくて力も無いし、頭もあまり良くないわね。
けど、勤勉で努力家な点は評価できるわ。
特に最近は頑張ってるみたいだしね…。
だから、お父様に後見を頼んであげようかって…つまりはご褒美よ」
「ご褒美…ですか」
「そう、ご褒美。
この私のお父様が後見人だなんて、光栄に思いなさい」
有り難い話とは思ったけど、直ぐには決められなかった。
ドナ先生は良い人だし、その父親なら悪い人物では無いと思うんだけど…。
「私も悪くないと思うわね…」
アヤ姉はドナ先生の意見に肯定的だった。
「父親の方は間違い無く人格者よ、信頼できる人物だと思うわ。
但し、小うるさい一人娘のオマケが付いてくるけどね」
「誰がオマケよ!」
冗談混じりだけど、アヤ姉の話からも悪い人でないのが分かる。
「まぁ、そうね…今直ぐに決める必要は無いわ。
自分なりにじっくり考えて、それから結論を出しなさい」
今までの僕は、これからの生活に漠然としたイメージしかなかった。
しかし学校への編入を考慮するなら、そうはいかない。
やるべきこと、考えるべきことが多くなるだろう。
そこで僕は、頼りになりそうな人達に相談することにした。
「…ったく」
「むぅ…」
練兵場敷地内に設置された休憩用の屋外テラス。
そのテーブルにイスターさんとガーベラさん、そして僕の3人が着いていた。
呼び出した2人は見るからに険悪で、お互いに目を合わせようとしない。
噂に聞いた話では先日、この練兵場で乱闘騒ぎがあったらしい。
幸い怪我も無く終わったが、おそらくは僕が原因だろう。
その事情も聞きたかったし、2人には仲良くして貰いたいのだけど…。
まずは別の話題から切り出すことにした。
「すみません、御二人にお話したいことがあって…」
「あぁ?」
「何だと言うんだ?」
「実は僕、後見人の話を紹介されたんです。
ですがよく分からなくて…それで御二人に相談したいんです」
「なに…後見人だと?」
「…それは本当か?」
先日の乱闘の話題を予想して身構えていたらしく、2人は驚いていた。
「はい、案内人のドナ先生から話があったんです。
僕さえ良ければ、父親を紹介してくれるらしいのですが…」
「てことは、レスリー卿か!」
「それは良き後見に恵まれたな」
「2人ともご存知なんですか?」
「当たり前だろ!」
「大陸一の頭脳と目される御方だからな」
レスリー・アグワイヤ
38歳
現アグワイヤ家当主であり、長女ディオーナ(ドナ)の実父。
ボーエン王国で代々の子爵を務める家系である。
貴族の序列としては中堅だが、その名声は非常に高い。
アグワイヤ家は代々高名な学者を輩出し、レスリーもまた例外ではなかった。
中等部から大学へ編入し、動物生理学を専攻。
研究室配属2年目で、大脳機能に関する論文を発表して名声を得る。
その功績から、若干18歳で王立ボーエン大学博士号を贈られた。
「だがな、あの人は頭が良いだけじゃないんだぜ?」
「そう、誰であろうと平等に接する人格者として知られている」
その後も数々の研究論文を発表し、レスリーは名声を高めていく。
だが、その一方で学術振興にも多大な力を入れていた。
王立ボーエン大学は幅広い門戸でも知られる。
大陸各地の神族、魔族は言うに及ばず、南方の亜人まで受け入れていた。
だが、実際は異種族に対する差別が少なからず存在した。
表面的には平等を謳っていたが、現実は異なっていた。
しかしレスリーは学問を志す者で有れば、分け隔てなく手を差し伸べた。
受け持った講義は知識的な一方通行では無く、双方の意志の疎通を重視した。
それは人間のみでなく、異種族に対しても同様であった。
神族や魔族は外見的に人間と同じだったが、亜人達は明らかに風貌が異なる。
それゆえに多くの人間の講師からも忌避されていた。
お互いが遠く隔絶された異種族であり、偏見や先入観は未だに多い。
しかしレスリーは、たとえ誰であろうと真正面から向かい合った。
人間も、神族も魔族も、亜人であろうと分け隔てなく接した。
形式的な礼儀だけを取り繕った他の人間の講師達とは明らかに違っていた。
講師1年目、レスリーの教官室に一人の亜人学生が訪れた。
南方出身で竜人である彼は、亜人の中でも特に人間とはかけ離れた容貌であった。
一言で説明すれば、人間以上の背丈で二足歩行する小さな蜥蜴である。
身体中を覆う鱗、口元の白い牙、巨大な尾。
この学生は志望する専門分野の大学研究室への転入を希望していた。
しかし人種と容貌の壁は厚く、亜人の学生の研究室入りは難しかった。
そこで竜人学生はレスリーに相談を持ちかけたという訳である。
数日後、レスリーは彼を連れて目的の研究室へ訪れた。
総責任者である教授と面談し、竜人学生の受け入れを求めた。
研究室内は全て人間であり、当初は交渉も難航したという。
しかしレスリーは粘り強く説得を続けた。
彼自身の今までの功績と名声も有り、簡単に断ることもできなかった。
更に竜人学生の身元保証人まで申し出ると、首を縦に振らざるを得なかった。
研究室転入後にトラブルは起きたが、その度にレスリーが仲介した。
彼は研究室と竜人学生との仲を取り持ち、良好な関係構築に力を尽くした。
5年後に竜人学生は学位を取得し、故郷の南方へと帰って行った。
竜人社会初の学位取得者でもある彼は、帰還後に首長達から重用される。
人間社会の躍進は彼等も無視できず、その知識と知恵を欲していた為である。
現在は彼を中心に竜人社会でも教育機関増設が進んでいるという。
ある時、竜人国家から国賓としてレスリーを招いての講演が開かれる。
若くして数々の功績を打ち立て、大陸一の頭脳と評価される人物である。
竜人のみならず南方諸国中の学を志す若者達が、遠方から講演会場へと足を運んだ。
当時の講演会場は決して立派で無かった。
文明的には遅れた南方諸国では、洗練された人間社会には遠く及ばない。
だが、レスリーは不快な表情を微塵も出すことなく講演を始めた。
施設規模から収容人数は300名程度だったが、2千人以上が詰めかけた。
レスリーは大学の講義と同様に正面から向かい合い、相互意見交換をおこなった。
本来なら午後開始の講演は夕刻に終了、その後は食事会が開催される予定であった。
だが講演は夕食時になっても熱が冷める気配は無く、席を立つ者も居なかった。
結局、レスリーは10時間以上も熱弁を奮い続けたという。
それ以降、南方諸国各地から多くの若者達が人間社会へと留学に訪れ始めた。
亜人達は身体能力的には人間より遥かに優っている。
だが、その人間社会から学ぶべき事は多いと…意識の変革が芽生えていた。
遠く離れた南方種族と人間社会では風習やしきたりが大きく異なる。
異種族間に発生する誤解や摩擦を、常にレスリーは間に入って解消に努めた。
こうした学術振興により、南方からの亜人留学生達が年々増えていった。
学位の修得数も次第に増加し、南方諸国にも知識階層が産まれようとしている。
本国への帰還後、彼等は学問の重要性とレスリーへの恩義を語り広めた。
『俺はレスリー先生の研究の功績が、どれだけ凄いか分からない。
その偉大さを理解するには余りにも勉強不足だからだ。
だが、あの先生が俺達にしてくれた事くらいは理解している。』
『腕力が全てだと思っている奴は、レスリー先生の話を一度でも聞いてみろ。
どんな馬鹿でも何が足りないか気付くはずだ。』
『人間達は俺達より弱いのに、俺達より強い神族や魔族と対等に付き合っている。
その長年の疑問をレスリー先生は解消してくれた。』
『皮膚、角、牙、爪、尻尾、羽、種族、地位、金、そんなモノは関係無かった。
学に対する熱意さえ有れば、レスリー先生は常に全力で応えてくれる。』
『俺達は変わらねばならない。
変わらねば神族、魔族、人間、いずれかの支配下に落ちるのは時間の問題だ。
未来はレスリー先生の存命中にどれだけ差を埋められるかにかかっている。』
特に竜人種族からの評価は高い。
最初に学位修得した竜人留学生は有力部族長の子息であった。
念願の知識階層構築の契機となったレスリーへの恩義の念は筆舌に尽くし難い。
『神族よ、魔族よ、人間よ、南方を含む全ての種族よ、心して聞くが良い!
レスリー氏への敵対行為は、我等竜人諸族に対する宣戦布告と見なす!』
神族及び魔族は亜人と比較すれば容貌的に人間と変わらない。
しかし歴史的な経緯により、両種族の留学制度を反対する声は少なくない。
先人が培った知識を敵対種族に開放するは如何かと。
だが亜人と同様に、レスリーは熱心な生徒ならば神族も魔族も関係無く接した。
留学当初は人間達の知識を修める目的だったが、それは愚考だったと悟る。
重要なのは学問を修める大切さを知ること。
レスリーの学に対する姿勢から、人間社会発展の要因を理解した。
更にレスリーは自身の研究室へ神族と魔族を積極的に招いた。
不戦協定より衝突は滅多に無いが、積極的な交流の機会も無かった。
しかし学問と研究を媒体にして論戦という形での交流が始まる。
彼等は直に交戦種族と触れ合い、偏見と先入観が崩れていくのを感じた。
『残念ながら法国は人間達の風下に立っていると認めざるを得ません。
しかし、それは人間達より知識や知恵が劣っているからでは有りません。
レスリー恩師に3年間学んで理解できました。
我々に不足していたのは知識でも知恵でも無く、学問に対する真摯な姿勢です。
そこには上も下も、神族も、魔族も、人間も関係無いのですから。』
『我々の最大の強みは剣ですが、最大の弱みも剣と言えましょう。
在学時、私はレスリーという偉大な人物から剣の脆さを教示されました。
氏は剣を振るうことなく、学で私の中の価値観を粉々に打ち砕いたのです。
剣を誇ったが故に学を蔑ろにした歴史を繰り返してはなりません。
過去の失態を反省し、王朝の子等には正しき道を指し示すよう進言致します。』
神聖法国と魔導王朝の知識階層に、広い視野と新しい価値観が産まれ始めた。
「俺の叔父貴は神聖法国のお偉方なんだが、レスリー卿の働きに感謝していたよ。
法国から出たこと無い奴等と違って、思考が柔軟で色んな物が見えてるってな。
留学後、レスリー卿の教え子達から要職に就く連中も多いらしい。
頭の固い古株の奴等には不評だがな」
「魔導王朝の重鎮たるカーリュ大公は学術振興に力を入れておられてな…。
レスリー卿の功績を誰よりも高く評価しておられるよ。
留学から帰還した者達が、王朝の新しい時代を切り開くと期待されている。
上層部の保守的な方々と衝突しているらしいがな」
「す…凄いんですね、ドナ先生のお父さん…」
「そう、神族、魔族、亜人からは、とっても評価が高いんだが…」
「うむ…肝心の人間達からは理解されておらんのだ」
灯台下暗し、という表現が正しいのだろうか。
人間社会の人間ながら、他の人間達からはそれ程評価されていない。
当然、大学や学術関係者からは絶大な信頼を寄せられている。
実際、レスリーに教えを請うために訪れる人間の若者は少なくない。
だが、貴族達からは不評であった。
特に親戚筋からの評判は決して良くない。
貴族本来の美徳とは蓄財と利権の拡大であり、それ以外は不要である。
レスリー自身は子爵の身分ながら、殆ど欲という物が無い。
10年程前に本妻を亡くしたが、新しく妻を迎えもしないし愛人も居ない。
父祖から受け継いだ銀鉱山と領地以外に資産を増やす気配も無い。
「貴族なんて人種はな、名声よりも金が重要なんだよ」
「そんな連中に、レスリー卿の偉大さは永遠に理解できんだろうな」
僕にも思い当たることは有った。
勇者候補召喚の儀の時、ドナ先生は必ずしも積極的では無かった。
おそらくレスリーという人も、自分の娘に参加させるつもりは無かった。
勇者候補で得られる利権よりもドナ先生の意志を優先したかったのだろう。
だが、ドナ先生は親戚連中からの圧力から父親を庇おうとした。
だから儀式に出席し、無難そうな僕を選んだ。
「後見人がレスリー卿なら文句無しだな」
「うむ、あの御方が後見人なら何も問題は有るまい」
「そ、そうですけど…そんな立派な人に後見を頼むなんて……」
改めてドナ先生の父親が凄いのは理解できた。
しかし、そんな人に頼んで良いのかと、更に悩みが多くなってしまった。
「アキヒト…お前な、元の世界の帰還を先に伸ばしたらどうだ?」
「…え」
「5年後じゃなくて10年後にするんだよ」
「な、なぜですか?」
「どうせだ、この世界で大学卒業してけよ。
今が確か13歳だったな?
10年後で23歳なら大学を卒業している頃だ」
「そんな…!」
「だって、5年後に帰ってからどうするんだ?
お前の世界の事情は知らんが、それから大学に行けるのか?」
イスターさんの指摘通り、非常に難しいと思う。
丸々5年間受験勉強無しで大学に入れるなんて絶対に無理。
それに帰ったら帰ったで大騒ぎで、暫くは受験勉強どころじゃ無いだろうし。
「アキヒトよ、少し考え方を変えてみてはどうか?
勇者候補の手違いで呼ばれたのは、お前にとって幸運だったかもしれんぞ」
「…どういう意味です?」
「頭を切り替えてな、この世界には留学に来たと思えば良い」
「えぇ!」
「5年では中等部と高等部だけで手一杯であろう?
それなら大学まで進んで、この世界の見聞を広めても悪くない」
「それは…そうですが…」
ガーベラさんの指摘も尤もだった。
考え方さえ変えれば、ある意味僕はとても幸運といえる。
別世界への留学なんて、通常では決して有り得ないことだし。
「もし、お前がボーエン大学まで進めば俺の後輩だな」
「えぇ!?イスターさん、大学生だったんですか!?」
「おう、一回生だ。
騎士団任務と並行して、学を身に付けとけってお達しだ」
いつも遊んでるように見えたので意外だった。
「そうか…私もボーエン大学の一回生なのだがな」
「ガーベラさんもですか!?」
「スジャーンおじさんの言い付けだ。
無学では魔導王朝の騎士団長に相応しくないとな」
ガーベラさんが通学しているのは納得だった。
この時、僕は2人の仲に気付いて少し安心していた。
先日は乱闘騒ぎが起きたらしいけど、険悪な雰囲気は何も無かった。
レスリーさんの後見人の相談を切り出しての和解工作は上手くいった。
「僕、安心しました。
神族と魔族の人達って、いがみ合ってるとばかり…」
「それは違うぜ、昔はともかく今はそんな時代じゃねぇ。
今更戦争起こしたって何の得にもならねぇよ。
大切なのは平和を維持しつつ、如何に大陸全土を発展させるかだ。
自国だけじゃない、他国もだ。
当然、その他国の中には魔族だって入ってるぜ?」
「うむ、神族だの魔族だのと剣を振るう時代は、とうの昔に過ぎた。
現情勢での開戦など現実的では無い。
ここまで発展し、平和になった世界を破壊する行為など論外だ。
残念ながら形式上、神族とは未だに交戦状態だが、それも解決せねばならん。
その新しい関係構築こそ、魔導王朝のみならず大陸全土に必要なのだ」
その2人の意見を聞いて、僕はすっかり安心してしまった……のだが。
「しかしよぉ…神族魔族に関係無く、ムカつく奴は何処にでもいるんだ」
「うむ…腹立たしい者は種族、国境を越えて至る所にはびこっておる」
テーブルの隣同士で、イスターさんとガーベラさんは睨み合っていた。
「…そういや、思い出したぜ。
先月、レスリー卿が開催した全種族合同の講義だ…。
やたらと勉強熱心な女が質問攻めして講義を中断させ、レスリー卿を困らせてたな。
さっさと授業を進めて欲しいってのに、回りの迷惑も考えずによ。
どこの空気の読めない馬鹿貴族かと思って見ていたが…」
「ほぅ…そういえば私も思い出したぞ。
先月、レスリー卿が開催した全種族合同の一般基礎講義だったかな?
最前列に高イビキで熟睡してる男がいて、レスリー卿が呆れ返ってたな。
貴重な一言一句を寝言でかき消されて、どれだけ迷惑を被ったか。
物の価値も知らぬ貴族の馬鹿息子かと思っていたが…」
「ほんの少しウトウトしていただけだ!」
「授業の進行を妨げる程、質問しておらんわ!」
怒声と共に2人はテーブルを立ち上がって向かい合った。
「今日は相談に乗ってやっただけで、お前に用は無ぇ…。
アキヒトに感謝するんだな!」
「喜べ、今日はアキヒトの顔に免じて見逃してやる…。
でなければ、とうに切り捨てておるわ!」
僕は頭をかかえた。
後見人の話は色々聞けたけど、2人の関係の悪化には溜息しか出なかった。