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水戸黄門退魔録 2  作者: あずびー
2/3

中編

 『死兵(アンテッド


光圀一行は加賀藩の金沢城に入った。藩主の前田綱紀にはあらかじめ連絡を入れており、丁重なお出迎えを受けた。

 「綱紀殿、大聖寺藩の状況は分かりますか?」

 「申し訳ござりませぬ。大聖寺藩までたどり着けないのでございます」

綱紀が厳しい表情で頭を下げる。大聖寺藩がおかしいとの情報から、幾人かの使者を出したのだが、山を超えられずに数人だけが命からがら帰って来たとの事だった。

 「やはり首無し武者が現れるのですかな」

 「いえ、戻った者の話では骸骨がいこつが襲ってくるとか、木乃伊みいらだとか申しておりました」

 「ふむ、死人ですか・・・・」

白髪の老人は顎鬚をさすりながら思案する。話からすると数十体の死人だが、反魂の術を使ったにしては人数が多すぎる。以前のような吸血鬼がらみの死人だと、骸骨がいるというのはおかしい。

 「綱紀殿、暫くの間ここを拠点にさせていただきますよ」

 「ははっ!  こちらこそよろしくお願いいたします」

隣の藩の事案だが、この金沢にも火の粉が飛んでくる気がするのだろう、綱紀は深々と頭を下げた。

光圀は立ち上がり、天守から遠く大聖寺城があろう方を伺う。今回も今まで遭遇した事案とは違う別の大事に思える。

白髪の老人は印籠を握りしめ、幼い少女と青年の顔を浮かべた。

 「また、頼らざる負えませんか・・・」

山の方から吹いて来る風を受け、白い髭が揺れた。




  「ご隠居!  あちらの街道へ抜けてください!」

角之進がリマを後ろに囲い、慌てて光圀を誘導する。

陽が高い内に大聖寺藩の状況を確認するため、早めに金沢城を出た。

街道から山道へと続く道。加賀藩から山を越え、大聖寺藩へと向かう道で、光圀一行は急襲を受けた。

敵兵は山から次々と降りてきて、刀を振り上げ切りつける。

 「爺! 凛から離れるな!」

助が敵兵のやいばをかいくぐり叫ぶ。

 「リマ様!   リマ様!」

ラルクが敵の間を抜け、リマと角之進の所へと向かおうとするが、敵兵の多さでたどり着けない。

角の拳が敵を砕く。助の刃が敵を切る。ラルクの術が敵を倒す。

しかし敵兵は、腕をもがれても、足を切られても起き上がり、光圀達を襲う。

敵は人間であって、人間でない。かつて人間だった者達だ。

骨だけの者もいれば、ボロ着を纏った木乃伊もいる。戦国時代であろう足軽兵の者もいれば、子供もいる。獣の姿も見える。時代や身分も関係ない者達が光圀一行を襲う。

角之進とリマは、光圀達との距離を敵兵によって離された。

 「  ご隠居!!   金沢の城へ!!! ラルクはご隠居を頼む!  リマは俺が必ず護る!!  」

角がリマをかつぎ、叫びながら山道を登って行く。

その背後を敵兵が襲うが、角のスピードには追い付けない。

 「爺! 一先ひとまず山をくだろう」

助が凛を庇いながら光圀に提案した。敵兵が多いのと、切っても切っても倒せない敵に、此処では不利と判断したのだろう。

光圀達は二手に別れた。角達は山を登り、光圀達は山を下った。

陽はまだ沈む時間ではないが、暗くなると多勢に無勢。不利なるが目に見えている。

 「角さん、リマ様を頼みましたぞ」

ラルクがしんがりを務めながら、小さく呟いた。



 「リマ、怪我はないか?」

角とリマは追手を巻いて、とりあえず山にあった洞窟に隠れた。

リマは吸血鬼だから怪我をしても再生はするが、痛みが無いわけではない。怪我の具合によっては、動けなくなってしまう時もある。動けないリマを庇いながら、先程の死人と闘うのは角でも厳しいだろう。

 「大丈夫です」

 「そうか、よかった」

角は笑いながら、リマの頭をなでた。

リマは不思議に思う。自分は外見は若いが、光圀や角、助達より遥かに歳上だ。でも、彼等には何故か歳上のような信頼感がある。頼ってもいい安心感。親のように無条件で自分を護ってくれるという安堵感。

リマは角の笑顔に笑顔で答えた。

 「ですが角さん、気になることが・・・」

 「どうしたリマ?」

 「先程、襲ってきた死兵アンテッドですが」

 「西洋では死人をあんてっどと言うのか?」

 「はい」

リマは自分達を襲ってきた死人の心当たりがあるらしい。日本の呪術ではあれだけの死人を操る術がないと光圀から聞いている。しかし、昔ヨーロッパで多数の死人を見た事があった。

 「あの死兵の群れを操っているのはネクロマンサーだと思います」

 「ねくろまんさー?」

聞きなれない単語に角が聞き返す。その問にリマが西洋の魔術師と答えた。

ネクロマンサーは、日本の反魂の術のように魂を死んだ身体に入れるのではなく、死骸を操る術で、むくろさえあれば術者の技量で多数の死兵アンテッドを操れるのだという。

 「ネクロマンサーか。そいつを倒せば死兵が骸に戻るんだな」

 「はい」

角は楽しみが増えた子供のように、唇を吊り上げ「分った」と頷き再び笑顔を見せた。

しかし、ネクロマンサーの居場所が分からない。死兵に対する糸口が見えても手段が浮かばない。

 「私がおとりになります」

相手は西洋の魔術師、当然吸血鬼の事も知っている。しかもリマは吸血鬼を生む吸血鬼。自分に不死を与えてくれる吸血鬼、必ず捕えようと姿を現すはずだと彼女は言った。

 「しかし危険だな」

 「大丈夫です。角さんを信じてますから」

吸血鬼の少女は、少し悪戯な笑顔を大男に見せた。




 「あれ死兵(アンテッドです」

金沢城に戻った光圀達はこれからの対策を考えるため、城主の前田綱紀と協議に入った。

リマの事が気になるのだろう、ラルクが率先して口を開く。

 「恐らく、ネクロマンサーが背後にいると考えられます」

ラルクはリマが角に教えた魔術師の事等を光圀達に伝えた。

 「ネクロマンサーはどれ程の骸を操れるんだ?」

山での死兵との戦いを思い出す助。優に五十体は超えていたと思われる。それに、死兵を動けなくしても、また新たな死兵が背後から現れる。無間地獄むげんじごくのように思われたのだろう。

 「同時に百体以上は可能でしょう」

ラルクは予想以上の数を口にした。あの山は霊場のような磁場に満ちていて、ネクロマンサーの術を使いやすいのだろうと推測する。それに、昔にいくさがあったのだろう、骸の数が多い事指摘した。

 「ネクロマンサーを倒すのが最善ですな」

光圀が綱紀に今出せる兵の数を確認する。光圀自身、西洋の魔術師に対する知識が薄く実際に対峙した事がない。、死兵との戦いは数で押す以外にないと判断したのだろう。

        ニャー

光圀の横にいつの間にか黒猫が鎮座している。驚く綱紀を制した後に、白髪の老人は猫の頭を撫でた。

一瞬で猫が消えふみに変わる。弥晴からの報告だ。

光圀は文に目を通した後に眉間に皺を寄せる。

 「大聖寺城が死兵に取り囲まれて、籠城しているそうです」

今の平和な世で、籠城しなければいけない事態に一同はざわめきだす。大聖寺藩も相手が死兵だけに籠城せざる負えなかったのだろう。

 「事態は急を要します。動ける兵で明日の朝に山へ攻め込みましょう」

本当は今すぐにでも動きたいが、兵の数が集まらないのと、夜はネクロマンサーの力が増すとラルクから進言があったからだ。ラルクもリマの為に直ぐに動きたかったが、今攻め込んでも今朝のような状況になるのが目に見えている。それに、何よりリマには角が就いている。

 「凛、今の内に休んどけ」

助が凛に寝室へ行くように促す。本当は凛を城に置いておきたいが、この城にも死兵が来ないとは限らないし、リマが山にいる以上、凛が大人しく残るとも思えない。

 「助、リマちゃんは大丈夫だよね」

碧い瞳が助に向けられた。心配なのだろ、薄っすらと涙が浮かぶ。

 「角がいるんだぜ!  大丈夫に決まってるだろう」

その場をつくろう言葉ではない、本心だ。助はリマではなく凛が今のような状況になったとしても、角を信じて待つ。無謀に飛び出したりしない。

 「うん」

コクリと頷た少女は、まだ聞きたい事があるのか、寝室に行かず助を見た。

 「デュラハンもネクロマンサーのせいなのかな?」

 「かもしれない」

少女が少し寂しそうに下を向いた。リマが旅に出た理由は、自分と同じように島国に流れ着いてしまった西洋の妖精を救うために来たのではないかと凛は考えている。それがネクロマンサーの操る骸だとしたら、リマは落胆してしまうのではないだろうかと思う。 

 「助、必ずリマちゃんを助けようね」

 「当たり前だろう」

凛は久しぶりな笑顔を助に見せた後、寝室に向かう。助も笑顔で返し、凛の背中を見送った。




翌朝、陽が昇る前。金沢城の前に兵が集まる。数は二百といった所だろうか。

皆、引き締まった顔をしており、屈強さを感じさせる。が、どこか恐怖感も伝わってくる。恐らく死兵の噂を聞いているのだろう。

 「凛、寝てないだろう?」

少し赤い目をしている少女の顔を青年が覗きこんだ。

 「大丈夫! それよりリマちゃんを早く助けなくちゃ」 

凛は昨夜、寝室には行ったがリマの事が心配で寝付くことが出来なかった。いかな角がついていると知ってても、吸血鬼のリマは普通の少女と変わらないと知っているからだ。

 「 皆の者!  気を引き締めてまいれ!  相手は人にあらず!  だが! 恐れるな!! 」

綱紀が皆の士気を高める。侍達は高揚し揃って声を上げ山へと向かった。

山に入ると案の定死兵達が襲ってきた。侍達は勇猛果敢に死兵達に挑む。

助も凛を庇いながら山上へと向かう。ラルクは光圀を護りながら死兵を叩く。光圀も襲ってくる死兵を杖で薙ぎ払う。操り人形のような死兵に対しては葵退魔銃は効果がないのだ。

先日とは違い、数で圧倒している光圀達だが、破壊しても次々と出て来る死兵の群れのせいで中々上へは進めない。

助が死兵の攻撃をかわしている時に何かを落とした。  印籠だ。  今朝、はぐれた時には助達が持っている方が良いだろうと光圀から預かったのだ。

死兵の攻撃の合間を見ても中々拾えない印籠を凛が拾う。

 「ありがとう凛。お前が持っておいてくれ」

 「うん」

凛は印籠を懐に入れた。その間も死兵は次々と凛達に攻撃を仕掛ける。終わりのないデスゲームのようだ。

だが、確実に山上へと進んでいる。助は覚悟を決めた。このまま突き進んで行くしかない!

爺達も同じ気持ちだろうと助は思いながら、後ろにいる凛を見る。

普通の少女なら、この死兵の群れに恐怖し、泣きじゃっくてもおかしくない状態だ。しかし少女は気丈にも死兵に立ち向かう。友達(リマを救う為に。

助は一刻も早く山上へ行けるよう、刀を振るった。





 「島国に流れ着いたネクロマンサー、聞こえるか!  私は吸血鬼のリマだ!」

早朝。薄明りの中、山のひらけた場所でリマが英語で叫ぶ。風が強いせいか、リマの髪が激しくなびいた。

しばらくすると雑草が生い茂る中に、ガサガサと草をかき分け死兵が姿を見せる。

死兵達は徐々にリマに近づいて来る。

 「良いかなネクロマンサー? 私が傷ついても」

吸血鬼の少女は強気に発言する。多少の傷なら直ぐに回復するだろうが、深手を負わすと、いかな吸血鬼でも直ぐには回復しない。不死を目論もくろむ者は目の前の不死の力を直ぐに欲しがるものだ。傷を負わせて、長引かせるのを嫌がるだろうとリマは考えたのだ。

 「ははは、始まりの吸血鬼がこの地に流れて着いていると言う噂は本当だったようだな」

死兵の後ろから黒いローブを纏った男が現れた。白人系だからだろうか肌の色が異様に白く、特徴的な鷲鼻をしている。

 「私を始まりの吸血鬼と呼ぶ貴様はバチカン系ではないな」

リマの呼び名は、その地その地で変わる。イタリアではしんの吸血鬼と呼ばれ、ドイツでは幻の吸血鬼とも呼ばれている。

 「儂はイギリスからこの地に来た。名はリードカーチ」

 「ほうー 大英帝国からわざわざ極東の地にか」

 「そうだ、天使の波動が再び東の地から流れたと、教会が騒ぎ出していたからな」

丹波での吸血鬼騒動の時に、凛と助三郎が聖剣に天使の力を宿したからだろうとリマは考えた。でも、再びとリードカーチは言った。丹波に事案以前に聖剣が使われていた事があるのだろうかとリマは思う。

 「教会の指示で此処を目指したのは良いが、たどり着けたのは儂だけだ」

 「調査なら私が江戸幕府に橋渡しをするが」

天使の波動の調査だけなら光圀に依頼すれば良い事。それでこのアンテッド騒動に幕がひけるのならとリマは案を提示した。

 「いや、気が変わった。調査よりも、この国を支配すれば良い事だ」

 「貴様! 何を言っている」

リードカーチが両腕を広げ呪文を唱えると、リマとの間にある土が盛り上がり出した。

土を突き破り巨大な腕が出現する。また、別の場所から足が、そして胴体。次々と身体のパーツが現れる。

全パーツが揃うと、三階建ての住居位の巨人になった。巨人の身体は人と獣の骨と遺体を組み合わせた出来た骸の塊だ。巨人には目鼻は無いが口はある。

          ホォーーーーーーーーーー

巨人が吠えた。死の世界から目覚めさせられた怒りの声のようにも聞こえる。

巨人がリマを捕まえようと手を伸ばした時、足に体当たりを喰らい地面に倒れた。

角之進が相撲の立ち合いのように、身体を巨人の足にぶつけたのだ。

 「やはりこの地の人間がいたか」

リードカーチが腕を巨人の方に振ると、死兵が巨人の身体に引っ付き、角にぶつかり壊された箇所のパーツとなり補強された。

 「リードカーチ! 何を考えている!」

角に守られながら、リマが叫ぶ。

 「儂は、お前を手に入れ不死となり、下僕しもべを増やし、この国の王となるのだよ」

巨人が角を襲う。角は正拳を瞬時に数発放ち、後ろに下がらせた後、足に蹴りを入れた。

巨人が再び地面に倒れ、身体が損壊するが、死兵を吸収して立ち上がる。

 「生身の人間が巨人相手に良く闘っていると褒めてやろう。だが儂の巨人は不死身なのだよ!」

骸の塊は何度も再生する。角はリマを後ろに回し距離をとった。

 「リマ、あいつも魔術とやらで動いているのだろ? だったら俺が奴と遊んでいる間に対処方を考えてくれ」

角は唇を吊り上げ、巨人に走る。巨人を蹴り破壊する。拳を入れ破壊する。頭突きを叩き込み破壊し倒す。

しかし巨人はその都度、死兵を吸収し立ち上がり復活する。常人なら既に疲弊し、諦めの色が顔に出て崩れかけるレベルだ。

しかし角は笑う。笑みを浮かべながら何度も巨人を倒す。

      楽しいのだ!

自分の力をフルにぶつけられる相手。しかも、ただのでくの坊ではなく、油断したら捕まり、身体をつぶされるであろう相手。隙を見せられない相手だ。

 「ハハハハハ、諦めろ。いくら強かろうが、生身の人間が儂の巨人に勝てるわけがない」

リードカーチが笑う。確かにそうだ。いかな角之進でもエンドレスに闘えるわけではない。心は楽しくとも身体は疲労を憶える。

 「角さん! まだ攻撃をしていない箇所に文字があるはずです」

リマが巨人の正体が分かったのか、角に叫んだ。

角が巨人の攻撃を避けながら、過去の死人返りの術を思い出す。そして跳躍して巨人のあぎとを思いっきり開いた。上顎うわあごの部分に文字が描かれているのが見える。

 「死人を使う奴の思考は同じみたいだな」

角の経験上、反魂の術は目につきにくい口の中、舌等に呪符を着ける事が多い。

文字は下にいたリマにも見えた。瞬時に読み取り角に叫ぶ。

 「角さん!  一番手前の文字を潰して!」

 「わかった!」

角が拳を握りしめ、「emeth」と書かれた「e」に拳を叩き込んだ。

        ズドーーーーーーーーンンンン

巨人がゆっくりと倒れ、地面でバラバラの骨となり、他の死兵を吸収する事もなくなった。

 「リードカーチ、もう終わりです」

リマがキツイ目でネクロマンサーを睨んだ。残っていた死兵達は角が残さず潰した。この辺りの骸は、巨人の身体を造る為にほぼ使っていたようだ。

巨人を倒された時に、呆けたようになっていたリードカーチが、リマの言葉で我に返り背を向けて走り出した。しかし角の脚力に勝てる訳はなく、捉えられた後、手刀を叩き込まれ気絶した。

薄明りの中で始まった戦いが、終わりを迎えた時には陽が高く登り、初夏の訪れを伝えていた。




 光圀達と戦っていた死兵の動きが突然止まり、ただの骸となった。

 「どうしたんだ?」

侍達は念の為、地に伏している骸に刀を突き刺す。しかし動く気配は無い。

 「角がやったのか?」

助が少し距離が離れている光圀を見た。

 「角さんがやってくれたのでしょう」

白髪の爺は頷き、微笑んだ。

凛が山の上を見ると、遠く大男と少女の姿が見えた。

凛が走る。助とラルクも走る。

三人は木々の間をくぐり大男と少女の元へと急いだ。

 「リマちゃん!  良かった!」

少女と少女が涙し抱き合う。銀髪の男は大男に笑いかける。青年は大男の腹にジャブを入れる。

安堵の空気が山林に広まった。

 「そいつが犯人か?」

助が肩に担がれている白い肌の男に視線を向けた。男は縛られ気絶している。

 「ああー 魔術師だそうだ」

角は光圀の前に着くと、リードカーチを役人に預け老人に頭を下げた。

 「ご心配をおかけしました」

 「ご苦労様でした。心配はしてませんよ、角さんですから。 ハハハハハ 」

大男と老人の笑声が山林に響いた。

凛とリマも手を繋ぎ光圀の元へと向かう。

突然強かった日差しが雲に遮られたのか、先程までの明るさを失った。

温度も下がったのか、冷たい空気が流れる。

       ザッ!  ザッ!  ザッ! ザッ!

凛の背後で、肥爪ひずめの音がしたと同時に、繋いだ手がほどけた。

首の無い馬に跨る首の無い武者が、凛を小脇に抱えている。皆、何が起きたのか分からず動けない。

   「りーーーーーーーーンンン!!!!!」

助が叫ぶ!   同時に角が動く!

しかし首の無い馬は、途方もない速さで山林を駆け上がり、姿を消した。

   「りーーーーーーーーーーーーーーンンンン!!!!」

怒りと焦りを乗せた青年の叫び声が、暗い山林にこだまし、事案は終息していない事を告げた。













 









 




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