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水戸黄門退魔録 2  作者: あずびー
1/3

前編

 以前書いた、水戸黄門退魔録の続編です。

凛とリマを書きたくなったので、書いてみました。

気に入っていただけたら幸栄です。

 男が二人、暗い山の中を走る。

走りながら何度も後ろを確認する。でも、二人とも止まろうとはしない。

ただ走る。いや、逃げている。

山道さんどうに出る辻切つじぎりを捕まえに山へ入り、逆に殺されかけて逃げて来た。

城を出た時は十二人の精鋭がいた。皆、腕に覚えのある者ばかりだった。

しかし今は二人しかいない。

あっと言う間だった。山道さんどうから山へ入り、行き成り肥爪ひずめの音がしたと思うと、五人の猛者の首が飛んでいた。

態勢を立て直し、七人で馬を囲んだ。

篝火かかりびの中に映し出された馬には、首が無かった。

鋭利な刃物で切られたと見られる断面は、骨が見え血が浮いている。

それでも馬は立っている。今にもいななきを響かせ、走り出しそうな息吹を感じさせる。

馬には鎧を纏った武者が跨っている。戦国時代の武将が纏う立派な鎧だ。

しかし、武者にも首が無かった。

首はないが、馬上から七人の役人を見下ろしているような威圧感がある。

役人達は異様な武者の姿に動けないでいる。

首無し武者が動いた。

馬の前足が上がり、篝火を持った役人に向かい走る。

首無し武者の大刀が振り上げられ、篝火が宙に舞う。いや、篝火を掴む腕ごと舞っていた。

さすがは精鋭部隊。気力をふるい、残された役人達が、刀を抜いて首無し武者に立ち向かう。

しかし役人達は、月夜に血しぶきを描き、倒れていった。

武者の刀から逃れた二人だけが、夜の山道を走る。

もう逃げる事しか頭に浮かばなかった。精鋭部隊が一瞬で壊滅したのだ。

男達は逃げる。しかし肥爪ひずめの音が遠ざかる事はない。むしろ近づいてくる。

後ろを走っていた男が転んだ。後方で肥爪の音が消えた時、悲鳴が聞こえた。

前を走っていた男は、後ろを振り返る事もなく走る。いや、逃げる!

後方から再び肥爪の音が近づいてきた。

月明りの中、男の前方に浅瀬の川が見えた。

辻切征伐に来る時に、十二人の猛者達と意気揚々と渡った川だ。

川と言っても浅く、足首位までの深さで、走る勢いを止める事もない。

この川を渡れば村がある。村に出れば何とかなるという保証はないが、男はただ人里に出たかった。

人里に出て、首無し武者という非現実的な怪異から逃れたかった。

男が川を渡りきった時、肥爪の音が聞こえなくなった。男は足を止め、河岸を振り返った。

川の向こうに、首の無い馬に跨る、首の無い武者の姿が見えた。

首無し武者は、川を渡る事はなく、そのまま踵を返し、暗い山道に姿を消した。

男は仲間を捨てて逃げて来た後悔か、助かった安堵からか、嗚咽まじりに泣き始めた。

暗い河川敷に、川面の音と男の泣き声が響いた。





 「首無し武者に大聖寺藩の精鋭がやられたとな」

 光圀公の屋敷、西山荘に不穏な情報がもたらされた。

 「はい、精鋭は十二人いたそうですが、一人が命からがら逃げ延びたとの事です」

白いひげの老人、水戸光圀公は陰陽網の使者からの報告を受ける。

水戸光圀。副将軍の顔を持ち、諸国を漫遊しながら水戸家のお役目、妖魔退治を行うたぐいまれな呪術者でもある。

 「首無しの馬に跨る、首無し武者か」

光圀の横で控えていた角之進が片方の唇を吊り上げた。

渥美角之進。身長は優に二メートルをを超える大男で、剣術より素手での武術を好む。この時代のあらゆる武術に精通していて、力での格闘を行う為に水戸家に仕えていると言っても過言ではない。

 「失礼します」

障子が開けられ、美少女がお茶を運んできた。

少女は輝く金髪を後ろで結び、透き通る白い腕で使者にお茶を勧めた。

金髪の美少女リマだ。彼女は吸血鬼を生む吸血鬼で、ヨーロッパでの迫害を逃れ、日本にたどり着き、先の丹波の事案で、水戸家に身を寄せる事となった。

 「お爺様」

リマはご老公様と呼びたいのだが、光圀が堅苦しいので呼び名を凛達と同じ「爺」で良いと言ったのだが、この呼び名にされたようだ。

 「どうされた、リマさん」

光圀と角之進にお茶を出したながら、少し気になる事があるのか、リマが口を開いた。

 「今のお話、もしやデュラハンでは」

 「でゅらはん?」

聞きなれない単語に、光圀が聞き返した。

 「はい、西洋のアイルランドに伝わる妖精です」

 「アイルランドの妖精」

 「首無し馬が引く馬車に乗る、首のない人型で、首は自分で持っていると伝えられています」

リマからデュラハンについての詳しい話を聞いた後、光圀は顎鬚あごひげをなでた。

 「似ていますね」

首無し武者の容姿と、川を渡って来なかった事実が川を渡れない馬車と符合している。

「リマさん。デュラハンの事、もっと詳細があるのなら書きつづってはくれませんか」

 「わかりました。自室でまとめてまいります」

リマは日本に流れてきて一年も満たないが、日本語の喋りと書き物もすでに習得していた。

長年生きて来たせいか、ヨーロッパの各国の言葉もマスターしている。

数百年生きて来た彼女が、迫害を逃れるため、その地に馴染ように努力してきた結果だろう。

リマが部屋を出て行き、陰陽網の使いも帰り、角と光圀が応接間に残った。

 「角さん、助さんと凛はどうしてますか?」

 「はい、町に買い物に行ってます。旅の準備をさせますか?」

白髭の老人は庭に視線を移した。縁側から秋に向けての風が光圀の髭を揺らす。

 「二人の力が必要になるかも知れません」

光圀は立ち上がり、縁側に足を進めた。庭に黒猫が鎮座している。

水戸家に仕える陰陽師、弥晴の式だ。

 「弥晴、先に行っててもらえますか」

黒猫が踵を返すと、塀を飛び越え、姿を消した。

陰陽師の弥晴を先に行かせる光圀。情報収集が目的だろう。

 「角さん、明日の朝に旅立ちましょう」

 「わかりました。助と凛には私から伝えます」

 「お願いいたします」

角も応接間を出て行き、光圀は一人庭を見る。いや、見えているのは庭の景色ではない。

老人の目には、天草の里での二人の姿が浮かぶ。

その時の二人の悲しい顔が浮かんだのか、光圀は天を仰ぎ自室へと足を向けた。



 「じい、また旅に出るだと」

町から戻った助三郎が光圀の部屋に怒鳴り込んできた。

天草助三郎。天草流の使い手で、天草の里で光圀に拾われ、今は水戸家に仕えている若者だ。

歳は十五、六歳だろう、ざっくりと切った髪を後ろ手にくくっている。

 「こら! 助! 行き成りご隠居の部屋へ押し込むな!」

背後で角が若者をたしなめる。しかし助は角の意見など耳に入れず、光圀の前に座り込んだ。

 「凛も同行させるからには、また危ない旅になるんじゃねえか」

鼻息荒く光圀に詰め寄る助、天下の副将軍に対して許される態度ではない。

 「うむ、また其方そなたらに迷惑をかけるかもしれません」

 「なんだと!」

光圀の顔に自分の顔を近づけ、睨みつける。

 「助! やめて!」

角の巨体の間から、少女が光圀の部屋に入ってきた。

天草凛だ。助三郎と同じ名字だが、兄妹きょうだいではない。

少しくせのある短い黒髪を跳ねさせ、助にしがみついた。

歳は十を過ぎたくらいだろう。小柄で、リマとはまた違うタイプの美少女だ。

 「私は大丈夫だから!  水戸家のお役目に協力したいのよ」

凛は少しあおみがかった瞳を助に向けた。その瞳には水戸家に協力して、世の中を平和にしたいという強い気持ちが伺える。

 「凛・・・」

助は凛を見た後、部屋を出て行った。

凛は助が出て行った障子戸を涙目で見る。そんな少女の肩に老人の手が触れる。

 「すまんが、また旅に付き合ってくれるか」

 「うん。助を怒らないでね」

 「助さんの気性きしょうは知っておる。凛が大事なんじゃ」

 「うん」

少女は少し頬を赤らめ、老人に笑顔を見せて頷いた。

 「お爺様」

 「リマさんか」

金髪の少女が書状を手に部屋へ入ってきた。

 「デュラハンの事、思いつく限り書きしるしてきました」

 「ありがとう」

白髪の老人は、その場で書状をひろげ目を通す。凛も横から書状を覗き込んだ。

 「リマちゃん、デュラハンって何?」

 「西洋の怖い妖精よ」

 「そうなんだ」

リマと凛が会話をしている内に、書状を読み終えた白髪の老人は、書状を旅の荷物に入れた。

 「お爺様、私も連れて行ってもらえますか」

金髪の少女が光圀の前に願い出る。西洋の妖魔絡みだから気になるのかもしれない。

 「こちらからもお願いしようと思っていました」

光圀は笑顔をリマに見せた。

 「また、一緒に旅にいけるね」

 「うん」

凛とリマは姉妹のように手を取り合って笑い合う。

部屋を出て、障子戸から見えない所に助三郎は座り込み、部屋での会話を聞いて溜息をついた。

 「私も行きますよ」

リマに仕える銀髪の獣人ラルクが、助の肩を軽く叩いた。



 『みずち


 ご老公一行は水戸を出て大きな問題もなく、飛騨を抜け加賀に近づいていた。

光圀に噛みついた助も、最初はぶつぶつ文句を言っていたが、今のところ平穏なのと、元々旅が好きなのだろう、機嫌良く角をからかい、凛をいたわりながらついてきている。

リマは金髪が目立つので、他の人には黒髪に見えるように光圀が幻術をかけている。

丹波から水戸への道中もこの幻術を使っていたのだ。

 「ご隠居、少し早いですがこの町で宿をとりますか」

角がこの先の道中を考え、光圀に提案した。この町を抜けると、しばらく町がないらしい。

 「そういたしますか」

少女達の体力を考えると、その方が良いと白髪の老人も判断したようだ。

 「では、私は宿を探してきます」

角が足早に歩き出した時、前方で揉めているのか、人だかりができている店があった。

 「こんな皿、いくらあってもしょうがねえんだよ!」

       ガチャ!   パリーーン     ガチャ!  ガチャ!

やくざ者っぽい男共が、店先で焼き物を破壊しているのが見える。

 「やめて!」「やめてくだされ!」

二十歳位の女と五十過ぎと見える男が、必死でやくざ者から焼き物を守ろうとしていた。

十人はいるだろうやくざ者達は、店の者と思われる女と男に襲い掛かかっていく。

助三郎が騒ぎの中に飛び込んで行った。

 「角さん!  ラルクさん!」

 「はい!」

光圀の指示の下、角とラルクも動く。

 「なんでぇ!  てめぇーは!」

間に入った助に、やくざ者達が殴りかかる。助はパンチをひょいひょいとかわしていく。

天草流で剣技を磨いている助だが、角からも素手の武術を教わっているので、やくざ者のパンチ等かわすのは造作もない。

 「こいつ!  ってしまえ!」

やくざ者達が刀を抜いて、助を取り囲む。

その輪の中に二メートルをを超える大男が入ってきた。

輪の外には銀髪の男がやくざ者達の背後を狙う。 

 「何だーー!  お前達はーー!  かまう事はねぇ!    れ!!! 」

角の前にいたやくざ者が、震えながら角に向かっていった。

角は振りおろされた刀を軽く除け、蹴りを入れる。

蹴られた男が、十メートル位は宙を飛び、地面に叩きつけられた。

 「一斉にかかれ!」

十手を持った親分らしき男が指示をだす。その耳元囁ささやくようにで声がした。

 「死ぬよ」

ラルクが親分の喉元に小刀を突き立てている。

親分のひたいから汗が流れる。つい先ほどまで誰も自分の周りにはいなかった。気配すら感じなかった。しかしまばたき程の間で背後から小刀を喉に突き立てられている。

 「わ、わかった・・・   引き上げるから、許してくれ」

絞り出すように、親分は許しをこう。

ラルクは視線を光圀に移すと、白髪の老人は頷いた。

やくざ者達は逃げ去り、焼き物の破片が散らばる店の前で、男と女が光圀達に頭を下げた。

 「大丈夫ですかな?」

老人は破片の片づけを角と助に命じ、凛とリマは店の者を支えながら中へ入る。

やくざ者が暴れたのか、店の中も散らかっていた。

 「ありがとうございました」

女が疲れた様子で礼を述べる。彼女はこの店「乃木屋」の娘で志野と名乗った。

男の方は昔からこの店で奉公している五平と紹介された。

 「酷いですな。やつらは何故こんな事を?」

 「はい、今度お城に献上する焼き物の品評会がありまして」

志野が言うには、献上する焼き物を選ぶ会があり、三人の窯元が選ばれたという。志野の父もその一人だったのだが、先日窯がある山で、父親がけものに襲われ亡くなった。

窯元の主人がいない焼き物屋は邪魔だと、品評会で相手だった窯元の商品を一手に預かっている兼村屋の若い衆が嫌がらせに来るのだと言う。

 「違う!  あれは獣じゃない!」

 「佐吉さん」

足を引きずりながら、若い男が店に入ってきた。

 「また兼村屋の嫌がらせか」

若い男。佐吉は荒れた店内を見て、唇を噛み締めた。

 「お嬢さん、俺が品評会の焼き物を出す!」

 「でも佐吉さんは怪我を」

 「怪我は足だ、手は無事だ。親方が護ってくれた手は・・・」

佐吉は自分の両手を見つめ、涙ぐんだ。

 「佐吉さんとやら、獣じゃないとはどういう事ですかな」

 「あなた達は?」

 「通りすがりの旅の者です。これも何かの縁、お力になれるのなら手助けしたい」

光圀は人の好い笑顔を佐吉に見せる。凛とリマも佐吉と志野を見て頷いた。

凛とリマの不思議な魅力と、老人のカリスマに魅せられたのか、佐吉は暗い記憶を探るように喋りだした。

 「信じてもらえるかどうか・・・」

親方と佐吉は、窯の温度を保つために山にこもり作業をしていた。良い焼き物は窯の温度が左右する。

二人とも寝ずに火の番をし、焼き上げを続けた。

親方も佐吉も疲れはしていたが、それ以上に焼き上がる物の出来栄えが楽しみだった。

今まで以上の物が焼き上がる。二人は確信して、窯にまきをくべ続けた。

冬の峠を越したとはいえ、夜の山はまだまだ冷える。二人は窯のそばだんをとり順番に休憩をとっていた。

佐吉が食事をしている時に、茂みがカサカサと鳴った。

陽はまだ沈んでいない。佐吉はウサギでもでたのかと思い目を凝らした。

茂みからの気配が木の上に向かう。木の方から夕陽が差し込んでいる。

佐吉は手をかざし、さらに目を凝らした。

木の上、枝の所に何かが二本足で立ち上がる。しかし猿ではない、猿よりも大きい。

二本足の何かが枝から飛び降り、佐吉に襲い掛かった。

佐吉は足で何かを蹴ろうとしたが、何かに足を掴まれ倒された。

 「佐吉、どうした?」

物音を聞いてか、親方が出て来た。

 「親方!  逃げてくれ!」

佐吉は何かに腕を噛まれながら、親方の身を案じ叫んだ。

 「こいつ!  職人の腕を傷つけるんじゃねえーー!」

親方は薪を握り、何かに振りおろす。振り下ろされた薪は頭を打ち抜いた。

人間なら悶絶して、気を失っているだろうの一撃だ。

しかし何かは倒れる事もなく、親方の首の噛みつき、夕日の中に姿を消した。

 「親方は即死でした。夕日の中で見たあいつは獣じゃねえ、人みたいだった」

 「人みたい?」 

 「はい、夕日の中でキラキラとうろこみたいなものが光っていました」

 「鱗ですか」

白髪の老人は顎鬚あごひげをさすり思いをめぐらす。

 「佐吉さん、親方を殺した奴の事は私達に預けてください。それより、品評会の焼き物は出せますか」

 「やってみます」

佐吉は嬉しかった。役人が獣の仕業と決めつけ、取り合ってくれなかった事を、この老人は獣とは言わず、奴と言った。自分の話を信じてくれている。

 「献上品を出す。それが親方への一番の供養でしょう。私達も手伝いますよ」

 「ありがとうございます」

佐吉と志野、そして五平はこの日初めての笑顔を見せた。




 「また派手にやったのか、兼村屋」

夜の代官屋敷、恰幅のよい男が酒を口に運ぶ。

 「いやいや藤江様、今回は邪魔が入りまして」

代官、藤江大杼ふじえだいじに兼村屋の主、兼村寛治かねむらかんじが酌をする。

 「邪魔が!」

 「はい、旅の者という知らせを受けてます」

 「旅の者か。でも乃木屋の方はもうよかろう」

 「いえいえ、あすこには佐吉がいます。手前共がここいらの九谷焼を一手に引き受けるには邪魔でございます」

 「もう一つの窯元はどうだ」

 「すでに買収ずみでございます」

兼村が風呂敷包みの物を藤江に差し出した。

 「わしをも買収するか」

 「めっそうも御座いません」

藤江は笑みを浮かべながら、風呂敷包みを懐に入れる。

 「藤江様、佐吉の始末を」

 「わかっておる。準備はできておる」

 「また、あれをを使うのですか」

 「そうじゃ、あやつを使う」

代官はおちょこを片手に、兼村屋は声を出し、静かに笑い合った。

庭には、やくざ者の後をつけていたラルクが息を潜め、聞き耳を立てている。

ラルクは代官屋敷の牢獄に意識を向けた。

牢獄の方には、今までラルクが感じた事のない悪い気が渦巻いている

感じた事は無いが知っている。出会った事がないだけだ。

人間が発する事ができない気。魑魅魍魎、または妖魔の気だ。

ラルクは静かにその場を離れた。

        キューーーーーールルルーーーーーー!!!!

        キュッーー     ルルルルルーーーー

                ギュ-イイィィィィ

背後で獣の声が月夜に響く。鳥の奇声のような声だが、ラルクには悲しい調べを奏でているように聞こえた。





 「妖魔の気配ですか」

乃木屋のあてがわれた部屋で、光圀はラルクからの知らせを受けた。

 「はい、牢獄で飼われているのかもしれません」

 「でも、妖魔が人の命令で動くか?」

助が何気ない疑問を口にする。丹波での猿人は吸血鬼の眷属として使われていた。今回も吸血鬼がからんでいるとは思えない。第一、吸血鬼を生むリマは、この地に来た事がない。

 「何かカラクリがあるのでしょう。ラルクさん、探っていただけますか。リマさんは私達が護っていますから」

ラルクはリマのおまもりで、水戸家に仕えているうわけではない。光圀はそこを配慮してラルクにお願いした。

銀髪の獣人はリマの方を見る。リマは微笑んで凛の手をとった。

 「今の私には友達がいるわ。大丈夫よ」

ラルクは最近よく見るようになったリマの笑顔に頷いた。

 「わかりました」

ラルクが返事と同時に部屋を出て行った。

 「角さん、明日から佐吉さんが山にもるそうです。彼に同行願いますか」

 「お任せを」

兼村屋達は佐吉が一番の邪魔のようだ。恐らく山での窯入れで命をねらうだろう。この時に妖魔の相手を角に指示したのだ。

 「助さんとリマさん、凛は私とここの手伝いをお願いします」

 「へっ!   俺はやくざ相手か」

少し不満なのか、お茶を飲み終えた後、唇を尖らせた。

 「助さんには、私とリマさん、凛を護ってもらわないと」

 「けっ!  爺は護衛をいらないだろう」

 「こら助!  ご隠居と呼べ!」

助と角がいつもの掛け合いを始めた。その光景を見て凛とリマが笑う。

ヨーロッパで迫害を受けてきたリマにとって、かけがえのない一時ひとときだ。

もし、デュラハンがこちらに流れ着いていたなら、こういう一時を味わって欲しいと思う。

リマは退魔よりも、救う方に回りたいと心の中で呟いた。





 代官屋敷の牢獄に女の泣き声が響く。

 「兄さん!   兄さん!」

女は十代後半位だろう、後ろ手を男に掴まれ、自由には動けないようだ。

 「ハハハ、お前の兄は益々(ますます)醜くなっていくのう」

男、藤江は牢獄の梁に女の顔を近づけた。

 「我聞がもん、妹が泣いておるぞ。もう一仕事すれば妹は自由にしてやる」

 「兄さん、もうやめて!!」

       バシッ!

藤江が女の頬を叩いて、床に押し付ける。  

 「我聞、やってくれるな」

 「   ジュウーーーーー   」

藤江が女を後ろから抱き上げ、着物をはだけさせる。

 「我聞、わしの言う事を聞かねば、妹が生娘ではなくなるぞ」

藤江が女の乳房を掴み揉み始める。女は顔を下に向け唇を噛んだ。

 「     グ・グ・グゥゥゥ -----  」

 「ハハハ、やってくれるな!  この前と同じ窯小屋だ」

牢獄の鍵が開けられた。

 「兄さん!」

牢獄から着物を着ていない人らしき者が出てきた。着物を着ていないが裸ではない。

篝火に照らされ、身体が光を放つ。人間が持つ肌の光ではない。

 「行きましたかな?」

 「行ったな。  ハハハハハ」

藤江と兼村が笑い合う。藤江は女の胸を再び揉み始めた。

 「奴が帰ってくるまで儂の相手をしてもらうぞ。ハハハハハ」

 「我聞も馬鹿ですな。妹は散々お代官様と私に抱かれているのに、生娘と思っていやがる」

 「生きてるだけ幸せだろう」

藤江は女を引きずりながら、牢獄から出ていった。

代官屋敷から人が出て来た。いや、人ではないかもしれない。

月夜に照らされた身体がキラキラと反射する。

人でないものは身体を反射させながら、月夜の道を川面を泳ぐ蛇のように、なめらかに暗闇に溶けていった。






 夜の澄んだ空気が山を包み、窯からの煙が月をよぎる。

二人の男が窯の火入れに力を入れる。佐吉と角之進だ。

 「角さん、すみませんね。警護だけじゃなく、窯入れまで手伝っていただいて」

 「いやいや、かまいませんよ」

角は魅力的な笑顔を佐吉に向けた。人柄を知ればこの大男に惹かれる人は多い。

僅かな間だが、佐吉も角と話をしていく内に、その魅力に惹かれた。

 「ありがとうございます」

佐吉は焼き入れ前の椀を見て頷く。焼き入れ前だが、自分の技術を全て注いで作り上げた。

親方が生きていれば、褒めてくれないまでも、焼き入れを認めてくれると自負できる出来だ。

 「佐吉さん、しばらく小屋にこもってくれるか」

窯の火を調整していた角が、小屋から窓の外を見て手を止めた。

 「・・・もしかして」

 「あー  奴が来た」

角が唇を吊り上げ、大きな身体を気配なく動かし、外に出て行った。

満月に近いせいだろう、月が明るい。角は木の枝へ目を凝らした。

   何かがいる!

枝が僅かにしなりをあげ、葉が揺れる。風が吹いてはいるが、風を受けてのしなりではない。

月明りを反射して、キラキラと光る者が角へと跳躍してきた。

   速い!!

キラキラが残像を写すかのように流れる。

   バキ!!!!!!!!

素早く反応した角が横へ移動し、背後にあった木がへし折られた。

キラキラした者が、木々の残骸をはらい、月明かりの中に浮かび上がる。

     キュルルル ーーー    ルルルルルルーーーーーーー

人でない者が鳴いている。いや、角には泣いているように聞こえる。

人でない者は二本足で立ち、両腕を上げ角を威嚇する。

キラキラと身体が光る。   鱗だ。

鱗が腕に生え、手の甲まで覆い、爪が鋭利な刃物のように光る。足は太もも部分だけが鱗に覆われ、足先は人の足のままだ。全体を鱗で覆われているわけではなく、部分、部分に鱗が見える。

首が異様に長い。そして顔が人のそれではない。

目が離れ、鼻は窪んで穴だけが見える。口からチョロチョロと、2本に割れた細い舌を出し入れしている。

 「ほー   こいつがみずちか」

角は乃木屋での光圀の言葉を思い出す。

 「角さん、恐らく親方を襲ったのは蛟でしょう」

 「蛟ですか」

 「蛇の精霊とも、龍の前身とも言われております。対処法は・・・・」

光圀が言葉を止めた。いや、えて言わなかったのだろう。

 「角さんの闘い方でやりなされ」

角が光圀の笑みを思い浮かべ、蛟に突進する。蛟は後ろに跳躍して角をかわす。

かわされたと同時に大男が回し蹴りに入る。蛟が大男の蹴りを腕でブロックし、後ろに飛ばされた。

いや、衝撃を押さえるために自ら飛んだのだ。

大男と蛟の距離が開いた。角が片方の唇を吊り上げる。楽しくなってきている。

蛟が木に飛び乗り、速い速度で木から木へと移動する。

角も目で追うが、とらえきれない速さだ。

突然大男の背後に殺気が走り、鋭い爪が月夜に反射した。瞬時に避けたつもりだったが、左肩の肉を少しえぐられた。肩から出血し、痛みが走る。しかし大男は唇を吊り上げる。

痛みよりも、高揚感のほうが増す。人間相手では得られない感覚。

今度は角が跳躍し、木の枝から蛟へと攻撃をしかける。蛟も跳躍して木の上に移り攻撃をかわす。

お互い凄い速さで木から木へ移り、相手の隙を伺う。

初めはとらえられなかった蛟の動きを、角の動体視力が捉え始めた。

蛟が木の上から角を襲う。角は地上から蛟へと跳躍した。空中で角と蛟の攻撃が交わる。

蛟の鋭利な爪がはえた腕が角に向けられた。角は右腕のラリアートで爪ごと受ける。

角が地上に着地し、蛟は後方の木に跳ね返された。

大男は血だらけの右腕をダラリとさせながら、蛟が落ちたであろう場所へと移動する。

草の上に大量に血痕と鱗が散っていた。しかし蛟の姿はない。

夜空には、月を隠すように窯からの煙が昇っている。

そして暗い山から、蛟の気配が消えていた。




 「御用だ!!」

乃木屋に役人達が踏み込んで来た。

 「お役人様、こいつらですよ。   おや?!、大男がいないな」

昼間のやくざの親分が、上の役人を引き連れてやってきたのだ。

 「これはこれはお役人様、手前共が何をしたというのでしょうか」

 「うるさい、田舎爺め!  お代官様が怪しい旅人を捕らえよと命じられたのだ」

光圀の問に、大男と銀髪の男がいないのを知って、親分が威勢を上げる。

 「怪しいのは、お前らの方だろう」

助が刀に手を掛ける。それを白髪の老人が制止した。

 「では、お代官様にお会いすれば、怪しくないのが分かるでしょう」

光圀は立ち上がり、役人達と一緒に表に出る。

 「ご隠居様!」

志野が不安げな顔を見せる。その横に凛とリナの姿がある。

 「おい、この旅の娘達も連れて行け」

親分がリナを舐めまわすように見たあと、指示をだした。

 「お代官様は若い娘が好きだからな、きっと喜ばれるぞ。今の娘にも飽きる頃だからな」

親分は子分達とほくそ笑んだ。下卑な笑いだ。代官が楽しんだあと、自分達におこぼれがまわるのだろう。

 「志野さん、心配せんでよい。直ぐに帰してもらえますよ」

 「志野さん、角が戻ってきたら代官の所にいると言っといてよ」

 「貴様ら! さっさっと歩け!」

役人が助の背中を押そうとした。助はヒョイとかわし、凛とリナの横に並んだ。

 「まあ、心配はいらねーぜ。ラルクも俺もいるから」

 「分っています。心配はしてませんよ」

リマが笑顔を助に向けた。見慣れたリナの笑顔だが、自分を信じていてくれるのが分かる。

 「助、私には無いの」

凛が少し唇を尖らせ気味に助を見た。

 「凛には言わないけど、わかってるだろ」

助の言葉に凛は少し頬を赤らめ、下を向いた。

 「こら!  お前ら喋るな!」

夜の町を、らしくない御用提灯の列が、代官屋敷に向かった。




 「もう、堪忍してください」

代官屋敷のあてがわれた部屋で男が腰を振る。

 「何を言う。藤江様は満足したかもしれないが、私はまだ逝ってないぞ。ハハハ」

男、兼村は女をいたぶるように、身体を舐めまわす。

 「いつになったら兄さんを戻してくれるのですか」

 「ハハハ、私をもっと満足させないと元にはもどさんぞ。 はー  はー」

兼村は下卑な笑いを口元に浮かべ、腰を振り続けた。

    ポタリ!

兼村の背に何かが落ちてきた。腰を振るのをやめ、天井を見た。

天井から血をしたらせ、所々鱗が剥がれ落ちた蛟が降りてくる。

 「我聞!」

我聞は角との闘いで深手を負って死を悟ったのだろう。残りの力で妹を助けようと屋敷に戻ってきたのだ。

兼村が女の上から離れ、逃げようと背中を向けた。その背に我聞の爪が刺さる。

 「兄さん!」

女が兼村をかばうように爪を正面から受けた。

 「キューーーーーーーー!!!!!!!!!」

女は爪を身体に刺したまま、我聞に抱きつくように倒れる。

 「に い・さん  もう   ころ  さないで・・・・・」

我聞は爪を抜き、妹を抱きしめた。

妹は兼村のような酷い男でも、兄に人を殺すという行為を重ねてほしくなかったのだ。

 「キュルルルーーーーールルルーーーーーー」

我聞は鳴いた。嗚咽して鳴いた。泣いた! 泣いた! 泣いた。

泣き声は悲しい調べとなり、夜の闇に吸い込まれる。

我聞は命が尽きるまで泣き続けた。



 「其方達そなたが乃木屋で暴れた旅人か」

代官の藤江が裁きを始めた。こんな夜に裁きを始めるとは異様な事だろう。

やくざの親分が、大男が居ない内にと急がせたようだ。

 「其方が代官の藤江か、行き成りお裁きとは感心しませんな」

縄で縛られたままの光圀が藤江を見た。

 「無礼であろう! 田舎爺いの分際で!   貴様らの罪は明白じゃ」

 「ほうー  どういう罪ですかな」

 「我の指示を受けた役人に傷を負わせた」

 「役人とは、あのヤクザの事ですかな」

 「ヤクザではない、十手を授かる役人じゃ」

この時代、権力者が使いやすいヤクザまがいに、十手を授ける事は珍しくない。

 「さようですか」 

 「分ったようじゃのう」

 「はい、代官が悪人という事が分かりました」

白髪の老人は、代官を見て微笑んだ。

 「きっ! 貴様!! 愚弄いたすか!  即刻打ち首じゃあー!!!!」

藤江が激昂げきこうし、周りの者に命じた。

役人達が刀を抜いた時、銀色の影が光圀の背後に現れた。ラルクだ。

 「ご隠居様、妖魔は命果てました」

 「そうですか」

ラルクは素早く縄を切り光圀に杖を渡した後、助、リマ、凛と自由にしていく。

 「何をしている!  早くこの者達を切り捨てよ」

さらに激昂した藤江は、自らも刀を抜き周りの者に怒鳴り散らす。

助が光圀の前に立ち、刀をむ向けてくる役人達を蹴散らし刀を奪った。

次々と襲い掛かる役人達を、見事な剣さばきで倒していく。これ位の相手なら天草流を使うまでもない。

ラルクはリマと凛を庇いながら、素手で役人達を始末していく。二人の女の子を庇いながらでも余裕が伺える闘い方だ。ラルクも自己の体術以外に、角から色々な格闘術を教えてもらっているのだ。

 「助さん、もうよかろう」

助が光圀から印籠を授かる。凛の力を使う為に印籠を授かるのは嫌だが、こういう時は素直の受け取った。

 「静まれ!  静まれ!」

助は叫びながら、ラルクは凛とリマを庇いながら、光圀を囲むように集まった。

 「この紋所が目に入らぬか!  ここにおあす御方とどなたと心得る。さきの副将軍、水戸光圀公であらせられるぞ!」

 「一同の者! ご老公の御膳であるぞ、頭が高い!  控えおろう!」

助の言葉をラルクが引き継ぎ、裁きの場に緊張が走る。

藤江達は目を向いてひざまずいた。 

 「代官藤江!  其方、兼村屋と結託して、九谷焼の利益で私腹を肥やそうとしているのは明白じゃ」

 「はて? 何のことやら」 

とぼけようとする藤江の前に、ラルクが裸の男を連れてきた。兼村だ。

 「こいつが全て吐いたぜ、乃木屋の殺人の件もな」

 「お言葉ですが、乃木屋は獣に噛み殺されたのですよ」

         バサ!バサ!バサ!

 「うわーーーーーーー!!!!!」

白を切る藤江の頭上に、大量の蛇の死骸が落とされた。

 「角さん、怪我をしているのにすみませんね」

大男が藤江の頭に次々と蛇の死骸を落としていく。

 「藤江、蠱毒の応用で蛟を造りましたね」

光圀は穏やかだな口調だが、厳しい目で藤江をみた。

藤江は我聞の牢屋で、餓えた蛇に共食いをさせていき、蛇の念が渦巻く中で我聞に蛇を食べさせ、殺させたのだ。

蛇達の邪念が我聞に憑りつき、蛟となったのだろう。

 「妹を人質に、殺人をさせるとは言語道断! 余罪を追求し、厳しい裁きがあると観念せい!」

光圀の言葉に藤江は頭を垂れて、蛇の死骸を見ながら唇を噛んだ。



 「出来上がったようですな」

乃木屋に焼き上がった器を佐吉が持ってきた。

 「はい、お世話になったご隠居様達に一番に見せたくて、持ってきました」

白髪の老人が器を手に取り、繫々と眺めて微笑んだ。

 「見事な皿です」

 「ありがとうございます」

光圀の誉め言葉に、佐吉は素直に礼を述べた。

佐吉自身、会心の出来で、親方が生きていたら、褒めてくれると思える出来栄えだ。

 「親方が見れば、きっと喜ばれるでしょう」

 「ありがとうございます」

佐吉は再び礼を述べ、涙を浮かべた。

 「佐吉さん、この皿を品評会に出してくれるのね」

志野が佐吉の手をとり、微笑んだ。佐吉も涙目で頷く。

 「佐吉さん。この見事な皿の命名を任せていただけますかな」

 「お願いいたします」

佐吉と志野も光圀に命名してもらおうと思っていたので、笑顔で頭を下げた。

白髪の老人は桐の木箱を手にとり、筆を走らせた。

       躍春ようしゅん         命名、梅里ばいり

木箱を受け取った佐吉は名前を確認する。

 「躍動する春と書いて、躍春です」

 「躍春!  良い名前、ありがとうございます   ・・・・・・・命名、梅里・・・」

佐吉がハッとして光圀を見る。白髪の老人は笑顔で佐吉達が土下座するのを制止した。

 「お忍の旅じゃ。そのまま、そのまま。親方のお参りをしてから、旅立ちますか」

 「ありがとうございます。もう行かれるとは残念です」

 「これからも、九谷焼を盛り上げて下さい」

白髪の老人は立ち上がると、仏間に足を踏み入れた。

不幸続きだった乃木屋の不穏な空気を振り払うように光圀の経が響いた。




 佐吉、志野と五平に見送られ、光圀達は乃木屋を出立しゅったつした。

事件が解決して、意気揚々と大聖寺藩に向かう光圀一行だが、ラルクだけが浮かな顔をしている。

 「ラルクさん、あなたの判断は正しかったと私は思いますよ」

下を向いて歩くラルクに光圀が声を掛けた。

 「ご隠居様!」

ラルクは我聞が謝って妹を殺してしまった時、彼の身体能力なら防げていたかもしれないのだ。

しかしラルクは生き残った妹が、兄の業を背負ったまま生きて行く事を懸念し、助けるタイミングを逸してしまった。その事を光圀に指摘されたのだ。

 「私が代官を捕らえた後、我聞と妹の供養を行いましたね」

 「はい」

 「あの時、阿弥陀如来の光に包まれ、昇天して行く二人が見えました」

 「 ・・・・・・・ 」

 「その時の二人はとても幸せそうでしたよ」

白髪の老人は、銀髪の男に優しい微笑みを見せた。

 「ご隠居様・・・」

 「ラルクさんの判断が正しかったと私は思います。しかし正解はわかりません。が、幸せそうに昇天した兄妹の姿が答えだと思いますよ」

光圀とラルクは空を見上げた。

背後でお土産にもらったうつわを見て、楽し気に笑い合うリマと凛の声が聞こえる。

ヨーロッパでは見られなかった、いや、水戸家に拾われなければ得られなかった光景だろうとラルクは思う。

リマを護り、仕えるという立場は変わらないが、この老人に仕えながら、リマを護るという事も悪くないとラルクは心から思った。













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