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まあ、戦いに勝った側の帝国の騎士を、そう簡単に襲おうとする馬鹿も少ないだろう。
と、思ってたんだけど。
ダーラムシアからローランディアの街道に戻り、中立地帯の砂漠まであと一日と言うところで。
大きな叫び声がして、馬車が突然走り出した。
「きゃあっ!」
俺と、姫さんと、エマだけが馬車に乗ってて。
俺は四つ足で踏ん張ったけど、姫さんは床に転げ落ち、エマは悲鳴をあげてひっくり返った。
「い、いったい何が・・・!」
すごい勢いで暴走し始めた馬車の、下のほうで何かが割れる鋭い音がして、ぐらっと傾く。
勢いがついたまま、道を外れ、一回転して横倒しになった。
繋がれたまま引きずられた、馬たちの悲鳴。
無茶苦茶に転げ回された俺はしたたかに腰をうち・・・。
「ねこしゃん!エマ!」
良かった、姫さんは無事か。
エマ・・・。
・・・見ちゃだめだ・・・姫さん・・・。
扉が半開きになって、エマは馬車の下に放り出されたんだ。
宙に浮いた車輪が、きいきいと回る音。
遠くで怒鳴る声。剣を打ち合わせる音。
・・・一体、何があった?
しばらくして。
上になった扉がばん、と音をたてて開き、髭もじゃの汚い顔がにゅっと中を覗き込んだ。




