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馬車が出るときさすがに姫さんは泣きべそをかいていたけど。
「ノアにはちゃんと出来たの。マリアンにも、出来るわよね」という母上の言葉はてきめんに効いた。
さすが、母上。
母上と侍女のティサ、副官のゴラン・パトリスと、兵隊二人が村に残る。
彼らと軍馬三頭を預かるだけでも村は手一杯なので、ラモントは四頭立ての箱馬車と御者、兵隊四名を連れて、先に伝令に出した二人の兵の後を追う。
そして上官に報告次第、新たな馬車を仕立てて戻ると誓ってくれた。
馬車の中には、姫さんと、俺と、侍女のエマ。
ラモントはジュエルも連れて行きたそうだったな。
母上と荷物の大半を降ろした馬車は軽く走るけど。
ダーラムシアを出るのに二日。砂漠の入り口まで三日。そのあと砂漠の旅を七日もかかる旅。
姫さんは半日で、「飽きた」
次の朝、馬車に乗るのを嫌がってぐずる姫さんをエマは止められず、とうとう癇癪が破裂。
鳴き出した姫さんにラモントは頭をかかえるが、五人の子持ちの兵士が言った。
「じゃ、お姫さまは俺の馬に乗りますかい?」
姫さんは、ぴたりと鳴き止んだ。
人質を人目にさらして動くのと、鳴き続ける姫さんとどっちがいいか。
またラモントは悩むことになったが、結局一日何回か姫さんを馬の前に乗せて、ご機嫌を取ることに。
苦労するなぁ、こいつも。
だけど。
戦争中で治安が悪くなっている時に、馬車の警護が騎士と兵士四人じゃ、頼りないと思うな。
強盗やら、無法者やら、街道は物騒になってるんだけどな。




