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村で一番大きな二階家は兵隊相手のいかがわしい事もする宿、貴族の宿泊には難があるので、ジョン・ラモントは村長と交渉して、丸太小屋の一つをまるごと借り受けた。
粗末な寝台にエマとティサが持ってきた毛布やひざ掛けを拡げ、母上はやっと横になってほっと息をついた。
休む前に、俺が軽く魔力を流し、蚤ダニ虱類を全滅させたことは内緒。
父上の城の馬小屋の方がまだ清潔だぜ、まったく。
ラモントと副官パトリスは緊張した顔だ。
同盟を結んだとはいえ、知らない他国で立ち往生じゃなあ。
二刻ほどして、村長が使いにやった男が、ロバの背に風呂敷包みをかかえた老婆を乗せて戻って来た。
丸太小屋に入って来た、しわくちゃの老婆を見て、姫さんが目を丸くして叫んだ。
「わぁ、魔女さんだー!」
ぎろり、とにらんだ老婆は、意外に若い声で言った。
「おちびはあっちへいっとれ。
うろちょろ邪魔をすると蛙に変えちまうぞぇ」
ビクン、と跳びあがった姫さんは、それでも母上が心配で、炉端の腰掛にチョンと座って膝を抱く。
そばに寄った俺を見て、老婆ははっと息を呑んだ。
うん、わかる?
俺も魔力持ちだって。




