第二章 マリアン 森 1
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ダーラムシアの端っこの開拓村は、国境の砦のすぐ近くにあった。
砦の兵たちの便宜を図るための、宿と店と酒場を兼ねた二階建ての建物を中心に、素朴な丸太小屋が数軒集まっただけの、小さな集落。
住民は半農半猟。
森を切り開いた畑で麦や野菜を作り、周りの豊かな森で狩りをして毛皮と肉を取り、年に数回、砦への補給部隊に同行する商人と取引してささやかな収入を得る。
しかしそのささやかな蓄えも、年に一度回ってくる年貢の徴税史にほとんど持っていかれてしまう。
つまり・・・。
典型的な、ビンボーな田舎の村。
そこへ騎士に付き添われた大型の箱馬車が入って来たので、皆びっくり。
その上、貴族の病人がいると聞いて、もう一つびっくり。
女手はあったものの、医者はいないし、砦の衛生兵も妊婦にはお手上げ。
「森に薬草に詳しいばあさんが住んどります。呼びにやらせましょう」
俺が馬車から降りると、集まった村の貧相な犬たちの間にざわっと動揺が走る。
よそものの、強そうな大きな犬。
まずは遠巻きで様子見か。
ふっ、初めはそんなもんだ。
俺様の力、見せつけてやるぜ。
俺は頭を上げて、空気を嗅いだ。
豊かな森の、濃厚な大気。
うん。魔素が豊富でいい土地だ。
「ねこしゃーん」
はーい、姫さん。
ねぇ、このピンクのリボン、もう取っていい?




