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林の中をだいぶ進んだところで、ぼろ布を頭に巻いた男が毛深い小馬を連れて待っていた。
顔を見て、ノアはびくりとする。
城に押し入った、曲者。
男はじろりとノアをにらむ。
「あのケダモノは一緒じゃねえだろうな?」
ねこさんが怖いの?
そうか、怪我、させちゃったからね。
「あれは、マリアンのペットだよ」
「ペットだぁ?あんなすげえ殺気を放つ物騒なもんが?」
そう、ねこさんは魔法使いだもの。
「時間がないわ、ジョゼ。行くわよ。ノア王子、馬に乗れる?」
乗れると答えると、一頭の手綱を渡され、三人は速足で林の奥へ向かう。
「早いとこローランディアを抜けるわよ。戦が始まったら検問が厳しくなるわ」
「戦?」
「ダーラムシアは帝国に味方することになったの。
王都なんかに行ったら、あんた、下手したら処刑されるところよ」
[父上や母上、マリアンと敵どおしになってしまうのか]
ノアはがっくりして、聞いた。
「僕はこれからどうなるの?」
「私たちはあなたの父上に命じられて迎えに来たのよ。ノア王子。
あなたはダーラムシア王の七人のお子の一番下。
継承権は低いけれど、ちゃんと教育を受ける必要があるわ。
それと、魔力の有無の診断を。幼児期を過ぎてから魔力が発現する子もいるから。
魔力があるのなら、ちゃんと学校に通って、使えるようにしないとね」
学校だって?
「魔法を、教えてもらえるの?」
「ダーラムシアの王族なら、魔法が使えて当然なのよ。
楽しみにしていらっしゃい」
うん、とっても楽しみ。
魔法を使えるようになったら、役立たずだの、落ちこぼれだの言われずに、本当の父上と母上に褒めてもらえるかもしれない。
ローランディアの父上と母上みたいに、優しい人だといいなぁ。
まだ見ぬ両親への期待を胸に、ノアは見知らぬ故郷に向けて馬を走らせるのだった。




