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少女の名が他作品とかぶっていたので訂正しました
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さんざんお人形がわりにされた後、家族のお茶の時間になった。
え?俺も連れてくの?
ねぇ、恥ずかしいんだけど、このピンクのおっきなリボンは外してくれないかな?
やたらきらきらしたおっきな部屋に、姫さんの親の番と薔薇臭い小僧。
もう一人の若い雌も匂いが似てるから、全員血のつながった家族なんだろう。
「まあ、マリアンはすっかりその子がお気に入りなのね」
「それがマリアンの猫ですって?ただの犬ころじゃないの」
若い雌はかん高い癇に障る声をしている。
気に入らん。
「ねこしゃんだもん」
幼女は俺をぎゅーっと抱きしめる。
『おい、苦しいって』
「私のジュエルをごらんなさいな。
この優美なこと。
これが高貴な血筋をひく猫というものよ」
灰色で顔と手足としっぽが黒い、痩せた生き物がとん、と卓から飛び降りた。
これってさっき中庭で・・・話の通じなかったあいつの仲間か?
平気な顔でこっちに来るなよ。
この顔、なんかに似てるな、なんだっけ・・・俺はおぼろな記憶を手繰る。
普通の仔犬なら持つはずのない情報を検索している、とは気づかずに。
わかった。
『そうか、狸だ!』
その顔がぬっと突き出され。
ぱぱぱぱぱぱーん。
超高速で顔を張られて、俺は呆気にとられしりもちをついた。
ふわりと卓に戻ったジュエルに、金の小皿でクリームが差し出される。
ふーん、贅沢に育てられてるんだな。
俺にも来たけど、陶器の皿にミルクだ。
ま、うまそうだもの、いっかー。
と、顔を突っ込んだら首のリボンがくるりと回って、ぽしゃんとミルクに浸ってしまった。
・・・そうだね、陶器で良かったかも。
「ふん、灰色に泥色か。二匹とも地味だな」
薔薇臭い小僧のフランツが言う。
「父上、ブルートの次の仔を僕に下さいよ」
「何度も言わせるな。あれは戦犬だ。
十二の子供が躾けられるような犬ではないよ」
うん。父上、えらい。
てか、こいつに生き物を渡しちゃいけないと思うぞ。
和気あいあいとお茶会は終わり、やっと解放。母のとこに戻れる。
女官が何か探してる。
絹とか、高価とか、聞こえるけど。
え?リボン?
ミルク風味で、おいしく食べちゃったけど、何か?
さんざんねだってるんだけど、この頃、母が乳をくれなくなってしまった。
俺の世話はしてくれるんだけど、乳を求めるとふいっと立って行っちまうか、うるさいとぺちっと踏まれるか。ちぇっ。
従者の人族は三度のご飯と五度のおやつはちゃんと用意してくれる。
でもだんだん無礼になってくるな、おい。
「まて」とか「おあずけ」とか、なんだよ。
命令するのは俺のほうじゃないのか?
だけど。
何か足りない。
思い出そうとすると頭がぼーっとしちゃうんだけど、何かをしなきゃいけなかったはずなんだ。
足りない。せつない。
喉の奥から何か突き上げてきた。
その時、鐘楼の夕べの鐘が鳴った。
ごおぉぉぉぉぉーーーーんんんん。
オォォォォォォーーーーン。
ごおぉぉぉぉぉーーーーんんんん。
オォォォォォォーーーーン。
ごおぉぉぉぉぉーーーーんんんん。
オォォォォォォーーーーどんがらがっしゃん!
何でー!何でおこられるのぉーーー!
鐘のほうが先に吠えたんだよぉーーー!
一緒に協力してやっただけじゃないかー!
生後二か月ちょっと。