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俺たちを護送する役目の帝国兵は、俺の首の大きなピンクのリボンを見て・・・。
ぷーっと吹き出しやがった。失礼な奴め。
「奥方、その犬は・・・」
「娘の乳母犬ですわ。
これがいないと娘がぐずって泣き止みませんのよ」
その通りだっていうように、姫さんはギューッと俺に抱きついて、兵士をにらむ。
乳母ねぇ・・・まあ、いいけど。
「しかし、馬車で犬などを連れて行くわけには・・・」
上官らしい騎士が近づいてきて言った。
「かまわぬだろう。おとなしそうだ」
そいつは近づいて、母上にあいさつした。
「同行させていただく、騎士ジョン・ラモントと申します。
長い旅になりますが、出来るだけの配慮はさせていただきます」
そして、俺の方へ手を差し出す。
いきなり頭に手を置こうとするんじゃなく、拳を出して匂いを嗅げという。
うん、犬を扱いなれてる奴だな。
俺はお義理にふんふんと匂いを嗅いで、尻尾をパタパタふってやった。
武骨な手が頭を撫で、首をこする。
俺は舌を出し、頭を傾げて、見上げて笑う。
『ほら、優しくっておとなしい良い犬ですよー』
「気立ての良さそうな犬だ。これなら平気だろう」
「・・・また、若の動物好きが始まった・・・」
つぶやいたのは、後ろに控えていた壮年の大男。
「ま、ちっちゃい子にピーピー泣かれるよりはいいでしょう」
まだごった返す中庭に、大きな箱馬車が止まっている。
あっちこっちで煙が上がっているけれど、もう混乱は収まってるみたいだ。
母上の姿を見て、女性たちが集まって来た。
「奥方様ぁ・・・」「どうかご無事で・・・」
厩番の小僧の横に、母が座っているのが見えた。
うん、母。俺、しっかり姫さんを守ってくるからね。
侍女のティサを連れた母上と姫さんを抱いたエマが馬車に乗ろうとする。
俺はあるものに気が付いて、飼い葉桶の方へ走った。
「ねこしゃん!」
大丈夫だよ、姫さん。
桶の陰から小さなものを咥え上げ、すぐに取って返して、馬車に飛び込み、母上の膝に置いた。
恐怖で固まって、びしょぬれになってるけど。
母上は抱き上げ、にっこりする。
「ジュエル」




