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父上たちが帰って来た。
なんかぼろぼろに疲れ果ててるけど、何班にも分かれて、規則正しく戻ってくる。
これが「せんりゃくてきてったい」ってものか。
厨房の男たちが物知り顔で講釈を垂れるのを聞くと、こういうのが一番難しいらしい。
敵に後ろを見せず、逃げ出さず、秩序を持って下がるっていうのが。
そうだよな、うまく逃げるのって、難しいんだ。
後ろ足や尻尾に怪我をしてる猫や犬は、けんかに負けて逃げようとしてやられてるんだ。
負け知らずの納屋の雄猫、オレンジ・ビリーなんか、顔は傷だらけだけど、体の後ろ側にはけがひとつない。
おっと、フランツがいる。父上は?
あ、母上と一緒だ。
埃だらけで、頭にほーたいっていう布を巻いてるけど、元気そうだな。
母上が、お腹に手を当てて、何か言うと、父上がぎゅーって母上を抱きしめた。
ベスに抱かれた姫さんが、大喜びで手を伸ばす。
俺も飛びつきたくてうずうずするけど、よしって言われるまで。我慢、我慢。
良かった。これからは父上が一緒だ。
これでもう、大丈夫。
「逃げ込む領民のために、今日一日門を開いておけ。
日没と同時に、跳ね橋を上げる。
王都からの軍と合流するまで、この城で持ちこたえるのだ」
「そうか。ノアは王都へ向かったか」
敵を迎え撃つ準備を終えて、父上が居間でくつろぐことが出来たのは、もう夜も更けてからだった。
「ひどい扱いをされていなければいいのですが」
使者の態度が悪かったので。母上は心配げだ。
「ふむ・・・」
父上は黙り込む。
「正式な通達はされておらぬ。
だが、三つの砦とも、強力な魔法攻撃を受けた」
母上がはっと息を呑む。
「ダーラムシアが、わが国に敵対したようだ」




