16
16
呆然としているうちに、別れがやって来てしまった。
収まらないのは、姫さんだ。
「いやーっ!ノアはうちの子よぉーっ!いっちゃいやーっ!」
前の時と同じに、ノアにしがみついて、わんわん鳴いて。
文官が邪険にノアを引っ張り、母上が姫さんを抱きしめて引きはがす。
バチッ!
火花が飛んで、大人二人が目を剥く。
「そんな!腕輪はちゃんと魔力を封じているはずだ」
文官があわててノアの腕を持ち上げる。
「もが・・・」
母上がしっかりと姫さんの口を押えた。
皆の気をそらそうと、俺はあわててノアに飛びついた、
「わあっ!」
文官が驚いて下がろうとして・・・あ。尻もちついちゃったね。
馬車のわきの水たまりだ。ザマみろ。
「ねこさん!」
ノアの小さな胸に、俺は頭を押し当てた。
ノアはいつもみたいに、頭をくっつけて俺の首筋をガシガシ撫でる。
「・・・ねこさん、いままでありがとう。
マリアンを、お願い・・・」
ちくしょおっ、そんな寂しそうな声出すなよ。
両手の魔道具を調べてみる。
うん、これは魔力が外に出ないようにするためのものだ。
体の中の流れには、影響ない。
『しっかり魔力を循環させて、練るのを忘れないようにしろよ』
心話が聞こえるけれど、道具のせいで自分は使えないノアは、はっきりとうなずいた。
俺の言葉、だいぶ通じるようになったのになぁ。
ああ、馬車が出て行っちまう。
元気でな、ノア。
俺、もう、胸がいっぱい。
『うぉーーーーーおんおんおん』
『うぉーーーーーおんおんおん』
「あーん、やだーっ!ノアーっ!」
俺の遠吠えと、姫さんの鳴き声が混じる。
今度だけは、うるさいって遠吠えを止めようとする奴はいなかった。




