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「やれやれ。荒事はするなと言っておいたのに。使えない奴だねぇ」
俺とノアはぎょっとして振り向く。
匂いも、気配もなく。
黒髪の女が、姫さんの眠る長椅子のそばに立っていた。
笹船でノアをおびき寄せたあのジプシー女!
「あんたには納得して戻って欲しいんだ、ノア王子。
あんたはダーラムシアの人間。
ローランディアに忠誠をつくす義理はないんだよ。
あんたの親御さんも、帰りを待っている」
ノアははっと息を呑む。
「僕の・・・」
「戦が激しくなれば、脱出もむずかしくなる。
心を決めておおき。また連絡するからね」
女の姿が、揺らいで消えた。
魔法で造り上げた幻影か。
ノアを狙ったんじゃなく、国へ連れ戻そうとしたのか?
曲者は逃げおおせ、ノアが何も言わないので、どさくさ紛れの泥棒が入り込んだんだろうと思われた。
ベスと姫さんは、薬を使われたこともわからずにすっきり目覚め、俺は一安心。
ノアは青い顔をして、黙り込んでいる。




