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「・・・僕は人質だ。
この国の王と、誓約を交わしている。
逃亡したら、預かったここの城主が責任を取らねばならない」
逃げたら、父上が責任を取らされる。
「では、仕方ありませんな」
言うなり男は立ち上がった。
「拉致ということにいたしましょう」
『この野郎!敵決定!』
男がノアを捕らえようと動く前に、音もなく俺はとびかかり・・・!
畜生!ドジを踏んだ!
初めての殺意と怒りのあまり、俺は小さな犬の身体であることを忘れ、後ろ上方から男の延髄を食いちぎろうとしたんだ。
犬の一飛びでは届かない距離だって言うのに。
男が気付いて身体をひねり、腕を上げて防御する。
その腕に噛みつく、と見せて前足をかけ、俺は男の顔を狙った。
「うわっ!」
普通の犬の攻撃方法とは違う、急所を狙ったひと噛みに、男は悲鳴をあげる。
俺はノアを庇って前に立ち、噛みちぎった頭皮と髪の毛をぶっと吐き出した。
くそっ、くせえ!こいつ、いつ頭を洗ったんだよ!
「誰か!誰か、来て!衛兵!」
ノアが叫ぶ。
俺も大声でがんがん吠えた。
男はちっと舌打ちして、だらだら血の流れる頭を押さえ、言った。
「この城は落ちますぞ!ノア王子!」
飛び込んできたトマスを、思い切り突き飛ばす。
吹き飛んだトマスは、後ろの兵にぶつかり・・・。
あーあ、数人巻き込んで階段を落ちる音がする。
続いて飛び出した男が、走り去る音。
ノアの膝ががくがく震えている。
『おい、大丈夫か?』
「ねこさん・・・」
ノアはしゃがみ込んで、ぎゅっと俺の首にしがみついた。




