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姫さん!ノア!
俺は階段を駆け上った。
なんで、なんで呑気に見物なんかしてたんだろ。
このどさくさに紛れて怪しい奴なんて入り放題じゃないか。
部屋にたどり着く前に、階段に残る、臭い。
少し前に、知らない人間が一人、ここを登った。
森と、煙と、薬品と、汗の臭い。
外からやって来た誰か。
雄。中年。健康体。
そこまで確かめて、俺は子供部屋の入り口からそっと中を覗き込んだ。
ベスと姫さんが、長椅子で寝ている。
いや、眠らされてる。
甘ったるい薬品臭が空中を漂っている。
どす黒い怒りが湧き上がる。
『俺の姫さんに、手を出したな』
どこのどいつか知らないが、八つ裂きにしてやる。
唸り声を上げたいのを押し殺して、伏せたまま部屋に忍び込む。
奥の重いカーテンの陰に、うずくまる黒い人影。
盾にするように間に小卓を挟んで、真っ青になって立っているノア。
「では、どうしても、同行していただけないというのですな」
くぐもった声が、ノアに尋ねた。




