表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の獣のまったりライフ   作者: 葉月秋子
6/225


 仕切りの板が外されて、やっと自由に外に出られる。

 

 外だ、自由だ、探検するぞ。

 と、明るい場所に出た途端、あまりの広さに立ちすくむ。


 石を敷き詰めた巨大な広場。

 敏感な鼻に押し寄せる膨大な情報。

 せわしなく右往左往するたくさんの人族。

 人が乗ったり引っ張ったりしてる巨大な四つ足の動物。

 がらがらごろごろとすごい音をたてる巨大な丸い輪っか。

 すべてが、見上げるほど、大きなものばかり。


 こ、怖いもんか、俺は強いのだ。

 そう、誰よりも強かったのだ。おぼろな記憶がそう叫ぶ。

 

 おおっ、見ろ、あそこに俺にふさわしい獲物が!

 黄色い生き物の集団が、素早く広場を横切っていく。

 獲物に向かって俺は疾走する。

 蹂躙し、血祭りにあげ、肉を喰らって・・・。


 どがっ!☆☆☆!


 固い壁にぶち当たって、俺はひっくり返った。

 息を全部吐き出してしまい、仰向けに四つ足を浮かせたまま呆然とする。

 しかしめげずに俺は跳ね起きる。

 なんのこれしきっ!


 どごっ!☆☆☆!


 今度は足で踏みつけられた。


 大きな口が俺の胴体をくわえて石畳に押し付ける。

 母に体当たりされたのだ。

 離せよ離せっ!

 え?反省?

 だれがそんなこと・・・


 ギュー・・・むぐぐ・・・

 

『・・・は゛い゛・・・は゛は゛・・・お゛か゛あ゛ち゛ゃ゛・・・お゛か゛あ゛さ゛ま゛・・・

 ひよこは・・・えものじゃ・・・ありまっしぇん・・・』



 解放された俺はよだれでべとべと。

 え?舐め取ってくれるって?

 そんな暇あるか。探検だーい!



 おっと、今度は良さそうじゃん。

 俺と同じ大きさの四つ足同士。

 長いしっぽがたしたし動いている。

 俺には兄弟がいないけど、こいつとならタイマンはれそうだ。

 

 おい、遊ぼうぜ。

 誘いのポーズで頭を下げると、しっぽがうずうず、ふりふり動く。

 遊ぼうったら。

 なんでそんなにインケンな眼で見るんだよ。

 尻が上がらず、背中が丸まった。

 なに?それがおまえの誘いのポーズ?

 よーし!



 フギャーーーっ!


 

 ・・・・・・・うそつきぃぃ・・・・・・。

 


 ひっかくなんてルール違反だぞー。

 ・・・なんで俺の爪は出ないんだろう。

 この足、走るにはいいけれど。

 なんか形が違うような気がする。


 ま、いっかー。

 おーい、母ーっ。おなかへったよーっ。

 



 どうもおかしい。

 あんなに楽に吸えてた母の乳なのに。

 乳首に舌が巻けなくなっちまった。

 舌が巻けないから、しごいて吸うことが出来ない。

 つい、歯を立てて、噛んじまう。

 母が痛がって立ってしまう。

『ごめん、ごめん、母』

 痛くするつもりはないんだけど。

 ねぇ、行かないで。飲ませてくれぇ。



 ・・・腹減ったー・・・・・・。

お城の中庭デビュー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ