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仕切りの板が外されて、やっと自由に外に出られる。
外だ、自由だ、探検するぞ。
と、明るい場所に出た途端、あまりの広さに立ちすくむ。
石を敷き詰めた巨大な広場。
敏感な鼻に押し寄せる膨大な情報。
せわしなく右往左往するたくさんの人族。
人が乗ったり引っ張ったりしてる巨大な四つ足の動物。
がらがらごろごろとすごい音をたてる巨大な丸い輪っか。
すべてが、見上げるほど、大きなものばかり。
こ、怖いもんか、俺は強いのだ。
そう、誰よりも強かったのだ。おぼろな記憶がそう叫ぶ。
おおっ、見ろ、あそこに俺にふさわしい獲物が!
黄色い生き物の集団が、素早く広場を横切っていく。
獲物に向かって俺は疾走する。
蹂躙し、血祭りにあげ、肉を喰らって・・・。
どがっ!☆☆☆!
固い壁にぶち当たって、俺はひっくり返った。
息を全部吐き出してしまい、仰向けに四つ足を浮かせたまま呆然とする。
しかしめげずに俺は跳ね起きる。
なんのこれしきっ!
どごっ!☆☆☆!
今度は足で踏みつけられた。
大きな口が俺の胴体をくわえて石畳に押し付ける。
母に体当たりされたのだ。
離せよ離せっ!
え?反省?
だれがそんなこと・・・
ギュー・・・むぐぐ・・・
『・・・は゛い゛・・・は゛は゛・・・お゛か゛あ゛ち゛ゃ゛・・・お゛か゛あ゛さ゛ま゛・・・
ひよこは・・・えものじゃ・・・ありまっしぇん・・・』
解放された俺はよだれでべとべと。
え?舐め取ってくれるって?
そんな暇あるか。探検だーい!
おっと、今度は良さそうじゃん。
俺と同じ大きさの四つ足同士。
長いしっぽがたしたし動いている。
俺には兄弟がいないけど、こいつとならタイマンはれそうだ。
おい、遊ぼうぜ。
誘いのポーズで頭を下げると、しっぽがうずうず、ふりふり動く。
遊ぼうったら。
なんでそんなにインケンな眼で見るんだよ。
尻が上がらず、背中が丸まった。
なに?それがおまえの誘いのポーズ?
よーし!
フギャーーーっ!
・・・・・・・うそつきぃぃ・・・・・・。
ひっかくなんてルール違反だぞー。
・・・なんで俺の爪は出ないんだろう。
この足、走るにはいいけれど。
なんか形が違うような気がする。
ま、いっかー。
おーい、母ーっ。おなかへったよーっ。
どうもおかしい。
あんなに楽に吸えてた母の乳なのに。
乳首に舌が巻けなくなっちまった。
舌が巻けないから、しごいて吸うことが出来ない。
つい、歯を立てて、噛んじまう。
母が痛がって立ってしまう。
『ごめん、ごめん、母』
痛くするつもりはないんだけど。
ねぇ、行かないで。飲ませてくれぇ。
・・・腹減ったー・・・・・・。
お城の中庭デビュー。