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留守を守る母上は大活躍した。
早春の今の時期は、冬の蓄えも尽き、食料の少なくなる一番大変な時なんだ。
こんな時に戦を仕掛けてくるのは、領民の苦労を考えない、ゴクアクヒドーの奴らがやる事なんだって。
城の備蓄を調べ、前線に送り出す糧食を用意し、領民は飢えていないか、春の収穫まで耐えられるか、近隣を回って様子を聞く。
父上がやっていた仕事を引き継いで、しっかり領地を守ろうと頑張ってる。
だけど夜は、火が消えたみたいに寂しい。
居間の暖炉の前で、周りにいるのは姫さんとノアだけ。
父上、マーガレット。フランツ。
いっぺんに居なくなってしまった。
それぞれに仕えていた者も去り、詩人のトマスも旅に出た。
母上はマーガレットの猫ジュエルを膝に、じっと火を見つめてることが多くなった。
あれ?
母上?
母上に近づこうとすると、膝に乗ってたジュエルがじろりとにらむ。
お前は関係ないんだ、ちょっと確かめさせてよ。
ふーーっ!
だからさぁ。
母上が手を伸ばして、俺を撫でてくれた。
耳を澄ますとかすかに聞こえる、母上と重なった小さな小さな心音。
俺は、にぱーっと笑って、尻尾をぶんぶん振っちまったよ。
母上、母上、おめでただねっ!
姫さん、弟か妹が出来るよっ!




