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肝心のノアじゃなく、姫さんの方が魔力が発動しちまった。
ローランディアの人間は、魔法を使わないはずなのに。
やっぱり小さなころから躾をしちゃった俺のせいなのかなぁ。
どうしようかと頭を抱えながら、まあ、ノアの訓練だけは続けて、王都からノアを迎える馬車が来るのを待った。
だけど、その馬車が来ることはなかった。
ダーラムシアからの特使が、ローランディアに着かなかったんだ。
宣戦布告もなく、ガタカン帝国が国境の砦を襲撃したから。
「マーガレットが母の所に行ってくれて、良かったわ」
母上が武装する父上を手伝いながら、言った。
マーガレットが中央に向かったのは、わずか十日まえの事だった。
「そなたとマリアンも一緒に行っていて欲しかった」
父上が母上の手を取って言う。
「そのお話は終わったはずよ」
母上がにっこり笑う。
国境から、砦を三つ越えれば、最初にぶつかるのはこの城だ。
間には小さな村や畑もある。
中央からの軍隊が到着するまで、父上はこの三つの砦を守りぬかなきゃならない。
城中に不安でいっぱいのいやな空気が立ち込める。
十三歳になったフランツは、初陣で父上と同行する。
緊張と興奮でがちがちだ。
怖がって汗かいてるな。
匂いでばれちまってるぞ。
ノアの身柄は宙ぶらりんのまま。
ダーラムシアの動き次第で、人質から虜囚になりかねない。
「子供たちを頼むぞ」
母上にそう言い残して、父上は兵士たちを率いて、出陣していった。




