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いつもの居間と違って書斎に通され、ノアは不安げに領主を見つめる。
王城でひとりぼっちだった子供を見かねて預かって来たのだが、ほんの一年足らずで元気になったものだ。領主は思う。
弱々しい不健康な影も消えた。
聡明な、澄んだ紫の眼。末のマリアンとも仲がいい。
出来ればもっと長く、ここで子供らしい時を過ごさせてやりたかったが。
「中央からの使者が着いた。
君を王城に戻したいそうだ。ノア王子」
ノアはさっと青ざめる。
「来月ダーラムシアから特使が来るのだ。
その宴に同席してもらう。
久しぶりに同国人と会えるよ」
「・・・もう・・・ここに戻れないのですか?」
「王の一存次第だ。できるだけ、口添えはするが」
所詮は人質。
ダーラムシアの動き次第で運命を決められてしまう。
うなだれてしまったちいさな黒髪の頭を、領主はくしゃりと撫でる。
「いくつになったかな」
「もうすぐ八歳になります」
「そうか」
この年で政治の駒にされるとは、哀れな。
「マリアンが、寂しがるな」




