第四章 暗雲 1
第四章 暗雲 1
一歳を過ぎて、俺はまた一回り大きくなった。
母と並ぶと、よくわかる。
戦犬のブルートに大きさは負けるけど、あいつはごつい筋肉の塊。
俺はほっそりとした鼻面に、すっきりと伸びた足。金色の尻尾も長くて、ふさふさだ。
きれいな姿だろう。走るのも速いぞ。
ブルートは戦に出るので、生まれてすぐ尻尾を短く切られているんだ。
でっかい図体で、走る時、短い尻尾がぴこぴこ動くのはちょっと滑稽。
まだ春は遠いのに、雪の中、使者が何度も行き来して。
父上と母上の顔が、日ごとに暗くなってくる。
マーガレットが予定より早く中央の王城へ向かうことになった。
この城にいるより、安全だからだって。
歪んだパンケーキみたいな形のローランディアの中で、この城は一番北にある。
ダーラムシアとの国境に近く、砂漠を挟んでガタカン帝国に向かい合う。
(えへん、俺も地理を勉強したんだぞ)
敵が攻め込んできたら、最初にぶつかる位置にあるんだ。
中央には母上の母上が住んでいるんだって。
父上は母上と姫さんもそっちに行って欲しがったけど、母上はぎりぎりまで父上のそばにいるって、その話はきっぱりと断ってた。
父上は強いもの。大丈夫だよね。
そしてまた、使者がやって来て。
父上が、ノアを書斎に呼んだ。
マスチフ系の犬とか、ドーベルマンとか、断耳、断尾してある子としてない子では、ずいぶん雰囲気が違いますよね。
古い映画「ドーベルマン・ギャング」の精悍な犬たちも素敵。
断耳してない近所のドーベルマンのジャックくんは、のんびりおっとりした顔で可愛かったです。