表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の獣のまったりライフ   作者: 葉月秋子
5/225



 ひと月たった。


 母の乳もうまいが、従者の人族が皿で出してくれる食べ物も素敵だ。

 べちゃべちゃで食べにくいことを除けば。

 母の乳首は俺の口にあった大きさで、含めば舌がくるりと巻いて、しごくだけで乳があふれて来るんだが。


 平たいものに入った食べ物は舌で舐めると端に寄っちまう。吸い込もうとすれば鼻に入る。

 はやくすきっ腹に収めたいのに、慌てると足を突っ込んで皿をひっくり返したり、中に座り込んでしまう羽目になる。

 もう、イライラが募るばかり。


 しかし、何か物足りない。

 何か。

 なんだっけ。

 何かとても大切なもの。


 腹がくちくなったので、違ったものを試してみるか。

 寝床の布。うん、噛みごこちは悪くない。

 木の板。ちょっと固いが噛みでがあるな。

 これは。

 うん、歯ごたえと言い、固さと匂いと言い、いいじゃん、これ。

 おまけに動くし、面白いぞ。

 求めるものとは違った気がするけど、まあいい、これで我慢するか。


 と、一心に噛んでいたら、いきなり首筋を掴まれた。


「おらの靴を噛むんじゃねぇ!」


 あ、中身が入ってた?




「ラス、また仔犬を借りていくぞ」


 いつもの少年、小姓のトマスと呼ばれる少年が来て、また俺を抱いて連れ出した。


 あの動物嫌いの女官め、俺を便利に使いやがって。

 俺に子守りを押し付けるなよ。

 ほら、またギャーギャー鳴いてやがる。


「姫様、ねこさんが来ましたよ」


 ぴたりと声が止む。

「ねこしゃ!」

 駆け寄ってくる姫さんの顔は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃ。


 あーあ。


『トマレ!』

 姫さんはぴたりと止まる。


『オテ!』

 両手を差し出す姫さんに、俺はとことこと近づいて、こっちの前足を乗せてやる。


 うん。

 しつけは小さなうちからしなくちゃな。


 


 


仔犬の舌のまきつく力ってすごいです。

人の指に吸い付くと、そのまま小さな体を持ち上げられるくらい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ