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「♪紫の眼は魔法の印♬」
ダーラムシアの黒目黒髪の一族に生まれた、紫の眼の少年が、杖をふるって魔法を放ち、羊飼いの少女を魔物の群れから救い出す。
ノアは喰いいるような眼で、マリアンはぽかんと口をあけて、トマスの歌を聴いている。
「ノアはまほーちゅかいなの?」
聞き終わったマリアンは、無邪気にノアを見上げる。
「僕は・・・」
ノアは口ごもり、首を振った。
横で寝ていた「ねこさん」がふぁーと大きなあくびをして、気楽そうに後足で首筋を掻く。
「紫の眼の人間は、魔法を使えるの?」
「ダーラムシアには、ちょっとした魔法を使う者はたくさんいますよ」
トマスは答える。
「生活魔法と言ってますがね」
トマスは振り返ってベスが近くにいない事を確かめ、二人を手招きした。
指先をぱちっと鳴らすと、指にぽっと小さな火がともる。
「「わあっ」」
「ろうそくを灯したり、コップに水を満たしたり。
魔力の強い王族は、もっと大きなことが出来る。
どうです、ノア様。
やってみたいと思いませんか?」
答えようとしたノアの頭に、はっきりと声が届いた。
『だめ!』
トマスには聞こえていないようだ。
『ねこさん?』
金色の毛の塊が、わふわふ言いながら飛びついてきた。
『だめ!おいで!』
陽気に跳ねまわる「ねこさん」だけど、声は厳しい。
「あそぼ、ノア。おいで、ねこしゃん」
はしゃぐ「ねこさん」に誘われて、話に飽きてしまったマリアンが立ち上がって走り出す。
あわてて追いかけるノアと一匹を、トマスはじっと見つめていた。




