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ノアが棒を投げて、俺が取ってくるのを繰り返してたら。
面白くなって、魔力の事をすっかり忘れちまったよ。
ま、いっかー。
今は一緒に遊ぼうぜ。
ほら、もう一度投げて、投げてよ。
後ろからぱちぱちと拍手の音が聞こえた。
「うまいうまい。
よくしつけられた、頭のいい犬だ」
リュートを背負った、吟遊詩人のトマスだった。
そう、こいつもトマスって言うんだ。
この名前、やたらに多いんだよなー。
小姓のトマスに、馬番のトマスに、赤毛のトマス。
城の周りにも十人はいるぞ。
そして、こいつはグリンフィールドのトマス。
生まれた土地の名らしいけど、みんなは「歌い手のトマス」って言ってる。
俺に近づいて頭を撫でようとするから、俺は耳を伏せて、すいっとよけた。
よそ者が、気安く俺にさわるなっ。
「警戒心も強いのだね。良い事だ」
不快な顔も見せずに、トマスはにっこり笑う。
ちょっとくたびれた中年だけど、笑いじわがよった眼はきれいな褐色。
少し離れた処についている女官のベスに会釈して、改めて俺たちにあいさつした。
「一冬ここでお世話になる、グリンフィールドのトマスです。
マリアン姫様、ダーラムシアのノア王子様、どうぞよろしく」
「お唄聞かせて!お唄!」
姫さんが手を叩いてねだる。
「仰せのままに」
トマスは背中のリュートをおろし、ぽろんぽろんと弾き語り。




