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ねぇノア。
魔力を込めない棒をいくら振っても魔法は発動しないって。
誰もいない処で、一生懸命杖に見立てた棒を振ってるノア。
体内の魔力をちゃんとコントロール出来てなきゃダメなんだよ。
まだるっこしいなぁ。
俺に気が付いたノアは、ぱっと顔を赤くして、逃げようと振り向き、立ち止まった。
覚悟を決めて、俺の前に膝をつき、綺麗な紫の眼で、正面切って俺を見つめささやく。
「ねこさん、君は魔法を使えるよね」
えー、なんのことー?
俺知らないー。
と、いまさら言っても遅いよなぁ。
「僕を助けてくれたのは、きみだよね。
お願いだ、また助けて欲しい。
ダーラムシアの王族は、魔法が使えなきゃいけないんだ。
みんな子供のうちから、魔力を使う訓練をしてきた。
僕だけが魔力を発動できないと、ずっとのけ者にされてきたの。
こんな遠くの国に送られたのも、役に立たないと思われたせい。
でも、でも、ちゃんと魔力を制御できれば、魔法を使えるようになれば・・・」
自分の国へ、家族の元へ、帰れるかもしれない。
澄んだ紫に変わった眼に、涙が溜まってうるうるしている。
そういえば。
フランツたちにいくらいじめられても、ノアは鳴いたことなかったっけ。
うん。
家族に会いたいんだね、ノア。
まだ七歳だものなぁ。帰りたいよねぇ。
偶然で不発とはいえ、一度魔弾を撃てたんだし。
自己流でやってて暴発でもしたらやばいか・・・。
でも俺、杖なんか使わないもんね。
『おて!』
ノアはぱっと手を出して、はっとして俺と自分の手を交互に見つめる。
うん、姫さんと同じに、心話は通じるじゃん。
おてしたノアの手に前足を乗せると、俺はゆっくりと魔力を流し始めた。
ほら。こうやって、流れをコントロールするんだ。
ゆっくりしたり、早くしたり、自分で流れを調節して、魔力を練っていくんだよ。
「ねこしゃーん」
おーっと、姫さんだ。
「ねこしゃん、ノア。何してるの?」
何って、えーと・・・。
俺は急いでノアの持ってた棒をくわえて、尻尾をふった。
『ほら、「取ってこい」で遊んでたの!投げて、投げて!』




