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最強の獣のまったりライフ   作者: 葉月秋子


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3 



 やっとはっきり目が見えるようになってきた。

 ともすれば立っているだけで開いていってしまって、使いにくかった四本の足もしっかり踏みしめられるようになり、頭にくっついていた耳も少し立ち上がって物音を拾いやすくなる。


 俺たちが住んでいるところは犬舎というところで、ほかにたくさんの仲間の声が聞こえる。

 母と俺は特別に、人族の従者つきで一部屋を与えられている。

 うん、母は偉いのだな。


 しかし部屋の中は狭くて何もない。

 つまらん。


 入り口の仕切りを越えようとするが、いつも母に見つかって、首筋を咥えられ、引き戻されるばかり。

 うん。母は好きだし、うまい乳をくれるし、甘い匂いであったかくて。

 でも、俺、退屈なんだよーっ。

 いつもは三、四匹の兄弟だって人族が言ってたじゃないか。

 遊び相手とか、けんか相手とか、負かす相手とか、負かす相手とか、負かす相手とか、いなきゃつまんないんだよーっ!


 というわけで、今日も俺は仕切りに挑戦するのだ。



 足をかけてよじ登ろうとするが、前足はかかっても後足がついて行かない。

 宙ぶらりんでじたばたする羽目になる。


 うまい事に、母はちょっと場を外した。この隙だ。


 必死によじ登り、上でグラグラすると、頭が重すぎて真っ逆さまに落ちた。

 『ぐう☆!』


 やった、成功!

 と思ったら、俺を抱き上げた奴がいる。

『おい、必死で越えたんだぞ、邪魔するな!』


「悪いなラス、この子をちょっと借りるぞ」

(そう、母はラスというんだ)


 と言うと少年は(顔は見えないけど、この匂いは奴だ)俺を抱いたまま速足で歩き出した。


 明るい処からくらい処へ。長く歩いて上の方へ。


 近づく前から大きな鳴き声が聞こえて、なんだかわかった。


『げ・・・』


「ほら、姫様、連れてきましたよ」


 ぴたりと鳴き声が止んだ。


「ねこしゃ!」


 しかし俺たちを止めたのは、あの動物嫌いの女。

「まあ、獣臭い! 

 ちょっとお待ちなさい」

 

 降ろされた俺は邪険にごしごし拭かれ、何か道具を向けられて・・・


 シュッ!


『わ。やば・・・へ・・・』


『へぷしっ!』

「きゃっ!」

『へぷしっ!へぷしっ!へぷしっ!』



 ・・・くしゃみが止まらなくなった俺は嫌な女に鼻水をたっぷりとかけ・・・俺が近づけないので姫さんはまた大声で鳴きだし・・・犬舎に連れ戻された俺は、母にやな臭いをすっかり舐めとられるまで、くしゃみをし続けたのだった。



 ・・・まいったぜ・・・


 

 


 


 

母は偉いんじゃなく、出産直後で隔離されてるだけです。

大型のボーダーコリーといった感じの黒い犬で、額と胸に白い星があります。

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