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父上や姫さんと、ちょっと散歩してただけなのに。
ノアはくたびれてベンチに座り込んじまった。
おい、大丈夫か?
ああ、また魔力が滞っているんだね。
俺が鼻を突き出すと、ノアは青い顔でちょっと笑って頭を撫でて来る。
「うん、大丈夫だよ、ねこさん」
大丈夫じゃないだろ。
いやな汗の匂いだ。
吐きそうなくらい気分が悪いね。苦しそうだね。
ちょっとだけ、手伝うか。あの夜みたいに。
すぐ近くにある細い手首の、古く凝った魔力の塊を吸い出して、井戸に呼び水するように、俺の魔力を少しだけ流してみる。
腕の裏の皮膚の薄いとこで、すーっと流れて消えていくくらい、少し。
「ねこさん?」
ほら、右腕だけ軽くなるのがわかるか?
こうして自分で魔力を流していかなきゃ。
「魔力?」
おっと、魔力の交換をしたせいで、思念が通じやすくなってる。
ノアはまじまじと俺を見ている。
「・・・・・・ねこさん・・・君は・・・魔物?・・・」
『ちがーう!俺は犬っ!』
俺がぶんぶんと頭をふると、ノアの眼がさらに丸くなる。
あっ、やべ・・・。
おバカな犬みたいに、『それ、なんですかー?』って、首を傾げなきゃいけなかったのに。
しっかり否定しちまったい。
・・・えーっとぉ・・・
焦った俺はおあいそにちょっとしっぽをふると、父上と姫さんの後を追いかけた。
ノアの視線が後ろから突き刺さるなぁ・・・。
でも、ノア。
お前の魔力。
美味いぞ。




