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最強の獣のまったりライフ   作者: 葉月秋子
2/225

第一部 第一章 幼犬時代 1 さしえつき

各章にタイトルを付けました


表紙絵をつけました2017/12/13




挿絵(By みてみん)



 満ち足りた暖かい場所。

 潮騒のような柔らかな音。

 頼もしい、ゆっくりした脈動。

 呼吸する必要もなく、ただ存在し、揺蕩(たゆた)って、夢を見ている。

 胎生の生き物の、体内にいるのだ。


 ん?


 温気に包まれ、夢見心地の中で、獣はいぶかしむ。

 春の日につららが溶けて地面に染み込んでいくように、ぽたり、ぽたりと、ひとかけらずつ、記憶がひらめいて消えていく。

 

 ああ、この小さな身体では、受け入れきれぬ量だからな。

 

 まあ、どうしても必要な記憶でもない。失ってもかまわんさ。

 残したいのは、幾度かの見事な戦闘と勝利の思い出くらいで・・・。

 ああ、そういえば、最後のあれは凄かった。

 あの銀の雄の味。流れ込んだ膨大な魔力。


(おい・・・おまえ、そこにいるのか?)


 銀の核を探そうとしたが、完全に融合してしまったのか、気配もない。

 まあ、いいか。

 では、この体にすべてを預けて、休むとしよう。


 その前に脆弱な新しい体を点検してみる。

 なぬ?

 感覚が五種類だけだと?

 おまけにこの感度の悪さは何だ。


 それはないだろう、と、頭の中を少しいじってみた。

 いくつか回路を開き、感度を上げておく。

 それだけで、残された魔力が底をつく。


 腹の管で母体と繋がっているのだが、流れ込んでくる魔力があまりにも少ない。


 あの人族たちはけっこうな魔力持ちであったが・・・。


 これでは魔力の蓄積どころか、記憶の維持さえ覚束なくなるぞ。

 生まれたら早急に、魔力の溜まりを見つけねば・・・

 そう、この事を覚えておかねば・・・




 ・・・・・・・・・



 潮騒の、流れが変わったようだ。

 脈動が早くなっている。

 身体を包む膜状のものが、何度も収縮を繰り返す。


 母体から切り離される時が来たようだ。

 押し寄せる流れ。激しい収縮。下方へ押しやられる。

 収縮、痙攣。収縮、痙攣。そして、収縮!

 狭い場所から激しく押し出された。


 


 さあ、新しい世界だ!



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