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最強の獣のまったりライフ   作者: 葉月秋子
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 レスリーがちょっと緊張した。


 お付きたちは、あれ?とか、さてはとか、ほう、とか、いろいろな表情。

 おい、そこの軍人、ニヤニヤするなよ、噛みついてやるぞ。


 姫さんはちらりと俺の方を見る。

 大丈夫だよ。この王子から、変な気配は感じないから。

 俺が軽く尻尾を振ったんで、「はい」と答えて立ち上がった。


 納屋の一部を天幕で囲った個室が出来てて、リール王子は重ねられたクッションに坐り、姫さんにも座れと合図する。

 お付きの一人が、お茶のカップを二つと、砂糖衣のかかったクッキーの皿を持ってきた。


「ありがとうファビアン、下がっていいよ」


 二人だけになると、姫さんにクッキーを勧めて、ちょっと恥ずかしそうに言う。


「マリアン、『ねこ』にさわって、いいかな?」



 姫さんがうなずくと、リールは王子の仮面を外し。

 姫さんがクッキーを堪能している間、ただの犬好きの少年に戻って、俺をモフりまくったのだった。




 

 次の朝。


 鋳掛屋のベンさんの馬車は、レッドレイクの街に向かって出発した。

 夕べさんざん取っ組み合って、毛だらけ涎だらけにしてやったリール王子は、ぴしっとした軍服姿に戻って、レスリーとケインの名を呼んで別れを告げる。


 そして。

「マリアンをしっかり守れよ、『ねこ』」って。

 昨日は嬉しそうに俺様に組み敷かれてたくせに、偉そうに。



 軍隊は前線の様子を見ながら、しばらくここを拠点とするようだ。

 シシィさんたちは、家は焼けちゃったけど、軍からの保証金が出たんで、ゆっくり進退を決められると、レスリーに感謝して見送ってくれた。


 ちょっと仏頂面をして馬に乗ったのが、カイル。

 マリアンが、フィアレス・リーの弟子だって噂が立っちゃったから。

 こっちを見る目つきが、気に喰わないなぁ。



 それはともかく。

 戦がどうなるかわからないから、この辺りからは、出来るだけ離れた方がいい。

 ローランディアからどんどん遠ざかってしまうけれど。

 

 ねぇ、姫さん、俺がついてるから、大丈夫だって。

 そんなに寂しそうな顔しないでよ。

 ねぇ。

 


 

 


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