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王子の護衛らしい騎士の一人が、名乗りを上げて、進み出る。
うん、こいつもレスリーより背が低い。
背中の大剣に手もかけずに、レスリーはまっすぐに立ったまま。
審判役が手を上げて・・・
下げた途端に対決は終わっていた。
騎士が剣を抜くと同時に、レスリーの大剣がそれを絡めとって跳ね飛ばし、大剣を騎士の首筋でぴたりと止めたんだ。
一瞬の、勝負だった。
「え!」
「うわ!」
「え、な、なにがおこったんだ?」
うっかり見損なった奴が騒ぐ。
「ま、まて!これは・・・」
剣を失った騎士が真っ赤になってるけど。
お前が間合いを読みそこなったんだよ、ばーか。
一歩踏み込んで派手な立ち回りをしたかったんだろうが。
レスリーのリーチと大剣の大きさを読み違えた。
しかし、バスタードソードって、両手剣のはずだけどな、たしか。
片手で軽々と扱うレスリーって、凄いかも。
「魔獣に『待て』は、ききませんので」
剣を引き、一礼したレスリーが静かに言った。
「見事であった」
ぱちぱち、と王子が手を叩く。
「良いものを見せてもらった。さて、諸君、明日も早い」
次は私が、と言いそうになっていた取り巻きたちより先に、王子の声。
お開きの合図である。
「そうだ、マリアン、まだ菓子は好きか?」
レスリーをうっとり見ていた姫さんが、はっと我に返る。
「は、はい」
「うむ。ついてまいれ」