18
18
みんながわいわい騒がしい、と、思ったら。
喜んで家のてっぺん、いや、城の物見櫓っていう所に駆けつけていく。
遠くに見える、砂煙。
姫さんの父上と、仲間たちが帰って来たんだ!
みんなが歓声を上げるから、俺も思いっきり吠えまくった。
姫さんたちはお上品に部屋の中で待つっていうんだけど、俺は一刻も早く父上に会いたくて中庭に駆けて行った。
帰った人と迎える人で中庭はごった返している。
俺は低いからみんなの脚しか見えないよぉ。
情報は先に鼻から入ってくる。
長旅で汗をかいた馬の群れの匂い。汗と汚れのしみ込んだくたびれた革製品の匂い。
大きな荷物を積んだ何台もの馬車。
たくさんの人間の汗と汚れと埃と怪我の匂い。
そして、見つけた!父上の匂い!
父上が馬から降りるのを待ちかねて、お尻をうずうずさせて待機。眼があった途端、おかえりなさいと飛びついた。
「おっ!マリアンの「ねこ」じゃないか。大きくなったな。
そろそろ母犬のラスを越えるか。
しかし、しつけは出来ておらんなぁ」
最後の一言は余計だよっ!
「・・・猫?・・・」
馬の上から、小さな声。
父上は笑って言った。
「ねこさんという名の犬だよ。
下の娘のマリアンの犬だ。
後でみんなに紹介しよう。
今はゆっくり休むと良い」
鞍に乗せていた、マントにくるまれた子供を抱き下ろす。
「ほら、新しい家族だよ、ねこさん」
城の仲間たちとは違う匂いの、変わった少年。
深く匂いを吸い込むと、俺の中で何かがぴくん、と跳ねた。
『こいつ!魔力持ちだ!』