14
14
「いや、嬢ちゃんのおかげでほんとに助かった。
なんて運がいいんだ」
ベンさんたちは大喜び。
何年も前に森に狩りに来て、姫さんにお菓子をくれた男の子は、なんとこのダーラムシアの王子様だった。
それで、王子様のお声がかかった事で、俺たちの待遇ががらりと変わったんだ。
ダーラムシアの軍は腐敗してて、縁故と賄賂が横行していると言うんだけれど、さすがに王子様の知り合いに無茶を言う奴はいない。
兵士たちの応対が丁寧になり、ベンさんの品物にはちゃんと対価を払ってもらえ、なんと火事の見舞金まで下賜された。
リール・ラムシス・ダーラムという長ったらしい名前の七番目だか八番目だかの王子様は、王族で将軍と言う地位にあるのに、上の方でふんぞり返ってないで、軍隊と行動を共にし、兵士たちに気さくに話しかけるので、とても評判がいいらしい。
古強者らしい年寄りやら、騎士やら、お付きやらに囲まれてるから、実際の戦はそっちがするんだろうけどね。
「・・・ダーラムシアの王子なら、ノアの家族だったんだね」
姫さんが、ぽつりと言った。
そう、ローランディアに人質として送られてきて、俺たちと一緒に暮らしてたノアも、ダーラムシアの王の子供だった。
じゃあ、こいつとは兄弟になるのか。
人質じゃなかったら、ノアもこんなに立派になっていたのかなぁ。
戦が始まって、ローランディアの王都に送られる馬車を見送ったのが最後だった。
今頃、どうしているんだろう。
無事でいるといいけど、と、姫さんが悲しそうにつぶやいた。