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軍の兵站部っていうのか、兵隊たちの世話をする部隊が到着すると、命令を受けた兵士たちがあっちこっちで働き始めた。
せっしゅーされた物は、もう軍の物、って言って、納屋なんか、どかどか改造し始め、専属コック兵って奴等が、焼け残った食料の一番良い処を持って行っちまうから、シシィさんがきりきり眦をつり上げていた。
母屋は焼けてしまったし、さすがに納屋に全部詰め込むのは無理だって、中庭に大きな天幕が張られた。
そうして準備が整った処へ、お偉いさんたちが馬で乗り込んでくる。
屈強な兵士たちに護衛された、お貴族様たちの一団だ。
シシィたちは隅っこで頭を下げてるけど、俺は犬だもん。関係ないね。
坐り込んでしっかり見物していると、ふと、その一人と目が合った。
そいつはちょっと驚いて馬を止め・・・あ、他の奴らも止まった。
一番偉い奴らしい。
そいつは訝し気な顔で、俺をじろじろ眺め・・・
「ねこ?」と、一言。
いえ、あれは犬ですが、と言いたげな奴らを引き連れてこっちに来た。
「それは、『ねこ』という犬ではないか?」
とても若い声だ。
「数年前、いろいろな芸をする面白い犬にあったのだ。
変な名だったからずっと印象に残っていた」
おいおい、失礼な。
だが、横にいた姫さんが、ああ、と思い出した。
「お菓子のお兄さん」