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ベンさんの知り合いのシシィというのは、がっしりした初老のおかみさんだった。
中肉中背のベンさんよりも頭一つ背が高い。
ご主人は亡くなり、息子たちと弟一家とで、広い農地を耕していたんだ。
「災難だったな、シシィ」
「助かったよベン、あんたが来てくれなかったら、野盗どもにいいようにされてた」
母屋は丸焼けになったけど、馬車が入る大きな納屋や、何頭も牛がいる家畜小屋は無事だ。
何人か怪我をしたけれど、重傷の人はいないようだし。
一応、全員が寝られる屋根だけはある。
ベンさんの話を聞いて、シシィさんたちはため息をつく。
「そうか、戦場がこっちに広がって来てるんだね。
これからはもっと治安が悪くなるだろう」
それでも、どこに逃げようもないけれどね、と、力なく笑う。
レスリーたちは野盗共の武器と持ち物を集め、農場の人たちと一緒に墓穴を掘った。
野盗たちの馬は農場に渡し、武器の一部をもらっていく。
種麹はシシィに渡したけれど、ここはちょっと危なくなりそうだから、姫さんと俺はレッドレイクの街までベンさんの馬車に乗せてもらうことにした。