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前言撤回、牛肉が最高だぁー!
厨房をのぞいたら、他の犬の匂いがするんだ。
見に行ったら、痩せたちっちゃい犬が、丸いものの中に入って、とぼとぼ歩いてた。
歩くと輪がくるくる回って、その先の棒も回る。
棒の先は大きな炉に繋がって、そこにはなんと!
良い匂いのぷんぷんするでっかいお肉の塊が回っていたのだ!
傍の腰掛で厨房の小僧が居眠りしてる。
滴る肉汁を大きな木の匙で肉にかける役なのに。
程よく焼けた肉はたまらない匂いがして、もう、涎がだらだら。
もう一歩、あと一歩、近づいて・・・。
あっちっ!
俺が鼻先をやけどしたのと、寝ぼけた小僧がひっくり返ったのが同時。
すっぽ抜けた木靴が炉の燠に飛び込んだ。
飛び散る火の粉。
『ギャンッ!』
飛びのいた俺は犬の入った輪車にぶち当たり、壊れた車は棒に刺した肉ごとひっくり返る。
灰神楽はたつわ、脂に火がついてじゅうじゅういうわ。
料理番が大声を上げて飛んできた。
手にはでかい棍棒。いや、麺棒。
しっぽを巻いたチビ犬が逃げ出した後に続いて、俺もさっさとトンずらした。
戦利品?
もちろんゲットーっ!
みんなのやることをよく観察していた俺は、布をかぶせて咥えれば、熱いものも運べるって気づいていたのだ!おまけに人目につかないし、見つかって追っかけられないし。
どうだ!俺様天才!
ちょっと金の毛が焼け焦げて、口の中やけどしたけど、俺様と同じくらいおっきなビーーーーフッ!
人気のないとこで豪快にかぶりついてたら、輪をまわしてたチビ犬がきゅうきゅう鳴いてやって来た。
肉を回す仕事は匂いばかりで、古パンのかけらしかもらってないって。
『ガウッ!』
これは俺の物だって言ったら、ぺたんとはいつくばって恭順のポーズをとるから、うん。少し分けてやってもいいや。
さすがにいっぺんに全部は喰えない。
うーん、おなか一杯。満足・・・と言いたいけど。
何を喰っても、魔力が足りないんだよぉ。
困ったなぁ。
ハムスター車ならぬ犬車は中世の城の台所で使われていたもの。
中の犬は肉の匂いを嗅ぎながらただ歩かせられるだけ。
ヒドイ・・・。