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「今まで冒険者にあったことはなかったわ。
お話はいろいろ聞いていたんだけれど」
ワクワクする冒険のお話を、いろいろ読んでもらっていた、と姫さんが話せば、ベンさんは陽気に答えてくれる。
「首都ダーラムのこちらがわには、冒険者は少ないからの。
なんせ、こっちにはダンジョンがないんだ。魔獣を狩れんから稼ぎにならん。
他の仕事や傭兵をやってちゃ、ろくな暮らしはできんのよ」
「魔獣狩りは、お金になるの?」
「魔獣を倒して手に入る、魔石は高く売れるからの。
魔法使いたちが魔力を溜めるのにも、奴らが作る魔道具にも、欠かせないのが魔石じゃ。
魔獣が強く大きくなるほど、取れる魔石も大きくなる。
ダンジョン深く潜る高位の冒険者たちは、結構派手な良い暮らしをしとるぞ」
「そんなのはごく一部の、一握りだけだ」
レスリーが口を挟んた。
「子供に変な夢を持たせちゃいけない、ベン。
魔獣狩りは、よほど腕の立つ冒険者でも命がけの、危ない仕事なんだ」
レスリーはマリアンの向かいに座り直し、真剣に言った。
「冒険者なんて、聞こえはいいが、真っ当な人間には軽蔑される、危ない、汚い仕事だよ。
A級の私が言うんだ。よく覚えておおき。
一人前になる前に、命を落とす奴がどんなに多いか。
ひとつ大きなけがをすれば、何の保証もなく、放り出されて飢えるだけだ」