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え?魔獣?
そうかぁ。魔獣かぁ。
そいつは・・・旨そうだ。
森の生き物を狩って魔素を喰っても、最近物足りなくなってた俺は、にまっ、と舌なめずりをする。
「魔獣ハンター?」
「わぁ、すげえ」
女冒険者の威容にびびってた村人たちも、息を呑んで注目する。
もう、子供たちは大騒ぎ。
「これこれ、お客にまとわりつくんじゃない。
すまなかったな、宿でゆっくり休んでくれ。
ベンさんは数日商売をしていくんだろう?」
「いや、今回は明日たつ。
修理はなしだ。買い物は早めに済ませとくれ」
それは大変。とおかみさんたちが騒ぎ出す。
「そりゃあ急だな。じゃ、マリアンは後から追いかけるか。
まだ葬式が済んだばかりだし、大家の狩人たちも戻ってないから」
「いや、行きたいのなら、このまま連れて行くが」
え、そんなに急に、と皆は驚く。
「どうだねマリアン。行くなら明日だ。
農場がだめなら、レッドレイクで知り合いに口をきいて、働き口を探してもらうが」
ちょっと驚いた姫さんだったが、はい。行きます、と気丈にうなずいた。
ベンの親父さん、なんだか変だな。
護衛付きなんてのも、今回初めてだし。
ちょっと不審に思った俺は、あわてて支度をしに小屋に戻る姫さんを追いかける前に、蚤がいるみたいに(いや、蚤なんて一匹もついてないけどさ)首筋をカリカリ掻いて、抜け毛を少し作り出し、小さな玉にして、ふっと息を吹きかけ、魔力を込めた。