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「馬鹿なことをお言いでないよ!」
「冒険者だと?」
「どこがいいのさ、あんな無頼の荒くれ者たち!」
「十の女の子の言う事じゃないよ」
「だいたい登録できる年にもなってないだろ」
そう、あと二年爺さんと婆さんが元気でいてくれたら。
姫さんが十二歳になってれば、事は簡単だったんだけどね。
二人が年取っていくにつれ、姫さんは母上の指輪を見つめて考えてることが多くなった。
十二歳になったら、成人。
年に一度徴税史が回ってきた時、村の住民として住民控えに記されてしまうんだ。
そしたら簡単に出ていくことは出来なくなる。
ここ、ダーラムシアは姫さんにとっては敵の国。
ローランディア辺境伯領はガタカン帝国に占領され、戦のど真ん中で帰るに帰れない。
親戚のいるローランディアの首都はその向こう側だし、父上と母上の消息も分からない。
いつ終わるかわからない戦が静まるまで自由でいるのには、定住しない流れる民に加わるか、冒険者としてギルドの一員となるか。
そう、上級冒険者と傭兵は、国境を気にすることなく、どこへでも行くことが出来るんだ。