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「マリアン、これからどうするね?」
ミックの父親の、酒場の主人が尋ねた。
男所帯のむさい狩人たちの家に、十歳の女の子を一人置いておくわけにはいかんだろう。
「良ければうちに来て、酒場の手伝いをするかね?」
そしてゆくゆくは店を継ぐミックの嫁に、と。
婆さん仕込みの酒作りの腕は、酒場の女将にはもってこいだ。
「ばっ、馬鹿親父!
通夜の席でなんてこと言い出すんだよっ!」
真っ赤になったミックがキレた。
だけど、姫さんは首を振る。
「ありがとぅおじさん。
でも、あたし、レッドレイクの町へ行きます」
レッドレイクは街道に出て、ダーラムシアの首都に向かって、十日も歩いた先になる。
役場と教会とギルドがある、この辺りでは一番大きな街だ。
「ギルドに行って、冒険者登録をしたいんです」
しん、とあたりが静まり返り。
そのあと、大人たちはいっせいに騒ぎ出した。