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ふっ、とひどい頭痛が消えて、楽になった。
気が付くとノアは寝台から離れて宙に浮き、ラダスターン学院長の濃紺の頭を見おろしていた。
寝台に横たわるのは、黒い髪の痩せた男の子。
少年の頬に流れる一筋の涙を優しくぬぐって、ラダスターンはため息をつき、うなだれた。
あれ?あれは・・・
あれは僕なの・・・?
そしてノアは今の自分に肉体がない事に気付いた。
僕は・・・死んじゃったの・・・?
そうか・・・
悲しいあきらめが、ノアを満たしていく。
僕はここでもいらない子なのか・・・
もう、死んじゃってもいいか・・・
肯定した途端、すうっと引っ張られる感じがして。
あたりは暗い、砂の連なり。
どんよりした灰色の空の下、眼の下にはどこまでも続く砂の原。
そしてその先には。
「湖?河?」
真っ黒な、果てしない水の広がり。
宙に浮いたまま、ノアはふらふらと、そちらに引き寄せられていく。
「流れてる・・・河だ・・・」
向こう岸が見えないほど広い、暗い、真っ黒な・・・
ああ・・・僕は死んじゃったのか・・・
誰もいない。
風と、砂と、黒い大河。
ここは・・・死の世界?
河に引き寄せられながら、ノアは思う。
なんて・・・寂しい所・・・