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ノア、ノーラン、ダリルの三人は、そのまま南寮の反省室に送られた。
質素なベッドと机と椅子。自室とあまり変わりはないが、外から施錠する形になっている、窓のない懲罰用の部屋だ。
「まだ罪人って決まったわけじゃないだろうに、なんだよ、この扱いは!」
シチューとパンと水だけの夕食の盆を受け取ったダリルが、シチューをひと匙のみ込んで、文句を言った。
「三日もこんな所に居たら、身体がなまっちまう!」
ノアはジャニーンにぶたれた頬をさすった。
あの子も同じ目にあっているんだろうか。僕のせいで。
「何なんだ?異端審問官・・・って」
ノアがぽつりと言うと、ダリルがためいきをつく。
「学園怪談だと思っていたんだけど。本当に居たんですね。禁術に手を出した上級生が突然消えたとか、持ち込んだ禁書がいきなり燃えたとか・・・」
「我が国の最高峰の魔導師「深森の賢者」達が使う執行機関です。お父上、ダーラムシア国王でも、彼らの言葉には逆らえない」
ノーランが的確に説明する。
「学院とは無関係だったはずですけど、ステットラン派があなたを陥れようとしたんだ、きっと」
「異端・・・って。何のことだ?」
「学院出身者でない野良の魔法使い、ダーラムシア流詠唱法を使わない魔法使いはみな異端。政府の要職にはつけません。ご存じでしょう?」
ノアは首を振る。
「知らない・・・」
「魔道王国ダーラムの歴史をご存知でしょう?」
「知らない・・・」
ローランディアでは敵国の歴史なんて教わらなかったし、ポルターク伯の所では礼儀作法と言葉遣いの特訓を受けただけで、いきなりここに放り込まれた。
うわー、そこからかよ・・・と、ノーランは頭をかかえる。