第七章 ノア 異端審判 1
長らくお休みして申し訳ありませんでした。
ストーリーの大筋は変わりませんが、一部加筆修正をしております。
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生徒たちの普段の授業から離れた一室で、カール・フォン・ステルツ教授と助手の見守る中、揃いの灰色の制服を着た一年生四人、七年生一人が、真剣に体内の魔力を探っている。
「魔力が砂利」と、ノアは形容した。
魔素から変換しただけの生の魔力は、砂利のように粗雑で、不均一。
それを「練り」、均一に、滑らかに体内を巡らせるようにする。
理屈はわかる。しかし実行は難しい。
どうしたらあんなに水のように自在に流すことが出来るのか。
チームリーダーが一番大きな砂利では、と、エリーは頭をかかえて悩む。
砂利・・・。
砂利を動かす・・・砂利を動かす・・・。
動いた砂利はぶつかる。ぶつかった砂利は割れる。さらに動き・・・ぶつかり・・・割れていき・・・。
やっとイメージをつかんだエリーはにっこり笑った。
これが、「練る」という事か。
「ぶつけて、摺り合わせて、砕くんだ」と、エリー。
ああ、もうコツをつかんだの?とジャニーンは羨む。
さすが学院一の秀才と呼ばれる寮長だわ。
ジャニーンはもう青年と言っていい整った容姿の七年生を、うっとりと見つめる。
「動くけど、ぶつけるって?」これはノーラン。
「動かすのも難しいのに」とダリル。
必死で体内の魔力を探る生徒たち。
ノックもなく扉を開けて、数人の黒いローブの人影が部屋に入って来る。
がたん、と椅子を倒して、カール教授が立ち上がった。
男女の区別もつかぬローブの一人が進み出て、重々しく告げる。
「一学年生ノアール。前へ」
驚くノーランが呆然とつぶやいた。
「異端・・・審問官・・・!」
ジャニーンが小さな悲鳴をあげた。