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馬で乗り付けた男たちは子供たちを見おろす。
「狩りの邪魔をしおったのは、こやつらか」
偉そうに言いやがって、お前の狩場かよ、ここは!
貴族っぽい奴らが六人。後ろにもまだいるな。
派手過ぎる衣装が下品だ。下っ端貴族かよ。
「近在の子供たちでしょう、罪はありません、お許しくださいな」
あれ。女性も混じってるな。
「ふん、よかろう、さっさと行ってしまえ。
だが見事な牡鹿を逃がした。
その犬には礼をしてやる」
なんだと?
牡鹿じゃねぇよ、小柄な牝じゃないか!
ほらふきめ。と言ってる間に、奴は弓を構えて俺を・・・。
狙うなって!
俺は慌てて逃げる・・・代わりに、奴の馬の下にとびこんだ。
そう来るんなら、やってやろうじゃないか!
勢子の一人の腰から鞭を引き抜くと、俺は勢いつけてそいつを宙に放り投げる。
馬たちの大っ嫌いな、長いくねくねしたもの。
『そおら、蛇だぞおっ!』
ちょっと幻覚をまとわせたから、もう、馬たちは大パニック。
きんきらの貴族たちを放り出して跳ね回った。
しっかりと馬を御してるのは後ろの・・・うん、あいつらは軍人っぽいな。
と、後ろで笑って拍手している奴がいる。
軍人たちに囲まれて、おとなしそうな白馬に乗ってるのは・・・子供?
「利口な犬だね。許しておやりよ、ティラメイ卿」
声変わり前の、男の子だ。
「し、しかし、こやつ殿下の無聊をお慰めするはずの狩りの邪魔を・・・」
殿下?
じゃ、こいつの方が偉いのか?
これは、何とかなるかも。
俺は白馬の方に走って行って、男の子を見上げた。
尻尾をぶんぶん振って、「いい子ですよー」のアピール。
ついでに後足で立って、前足で「お願いー」のポーズ。
男の子はびっくり、眼を丸くして、けらけら笑いだした。
うん、これ丸く収まるかも。