2
第一部の冒頭にイラストをつけました。
生後三か月のねこさんのシルエット。
2
早春の森の中を、子供たちが駆けていく。
あっという間に俺は姫さんたちに追いついた。
酒場の息子七歳のミック、五歳の双子リンとシン、姫さんと同い年のホップ。
まだ所々雪だまりが残る森の中。
目覚めた樹々は甘い樹液を巡らせ、煙るような新緑の若芽をまとい、足元にスノードロップが花開く。
ミックはさっそくウサギの通り道らしい草むらを見つけ、曲げた枝とひもで作った罠をしかけようとするけど。
へったくそな罠だな。
それにそこ、通り道じゃねぇし。
草の生え方をよく見て見ろよ。
人里にこんなに近いと、ウサギは凄く用心深くなるんだ。
歩いた跡を見つけるのは難しいんだぞ。
と言っても仕方ないか。森に慣れない子供のお遊びだもんな。
見ている子たちもすぐに飽きて、かってに探検を始める。
あ、いいもんみっけ。
おーい、姫さん。
俺が案内して、鈴百合の群生を見つけたみんなは大喜び。
細長い白い花を摘んで、根元の蜜をチュッと吸う。
ほんの一滴しか入ってないけど、貴重な甘味だ。
小さな鉄片で作った根掘りを持ってるミックと姫さんは丸い球根を掘り出して袋に詰めた。
牛乳で煮ると、ほくほくして美味いんだ。
小さな道具だけど鉄は高価だから、他の子供たちはうらやましそうに見てる。
雪だまりにつけられた獣の足跡をたどり、食べられる木の芽を摘んで集め・・・。
おい、ちょっと遠くへ来すぎてないか?