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最強の獣のまったりライフ   作者: 葉月秋子
138/225

第六章 マリアン 1

すみません、章を変え忘れていました

1



「そう、お水を入れておくれ。すこーしずつね」


「ん」


「パイを作る時はこれがコツなんだよ。

 ここでお水を入れすぎると、タネが柔らかくなってべたべたするんだ」


「ん」


 小麦粉とラードを使ってパイ皮を練る婆さん。

 台に乗って慎重に水を足していく姫さんは何も持っていない。

 ちっちゃなてのひらに溜まっていく綺麗な水を、少しずつパイ皮に足している。


 『生活魔法』と呼ばれる、わずかな魔力で操作できる『水』魔法。

 まだ魔力を溜める量が少ないから、ちっちゃなてのひら一杯しか出せないけれど、俺様が教えたから、きれいな美味い水だぞ。


 もっと魔力があがれば『水の針(ウォーターニードル)』が打ち出せるんだけどなぁ。


『雷』と『火』への適性がある姫さんは、『水』や『土』系の魔法は得意じゃないんだ。




「おーい、マリアン」

「でーておいでー」

「あそぼうよーお」


 外でミックたちが呼んでいる。


 村の子供たちに甘草の飴をふるまったのがきっかけになって、姫さんは村の子供たちに受け入れられて、一緒に遊ぶようになった。

 同年代の女の子がいないんで、年の近い男の子たちと泥まみれになって遊んでるんだ。


「いっていい?おばあちゃん」


 粉をこね終わり、よく絞った布巾をかけた婆さんに尋ねる。


「行っておいで。あんまり森の奥に入っちゃいけないよ」


「うんっ!行こう、ねこさん!」


 婆さんが作ってくれたウサギ皮の帽子とケープをひっつかむと、姫さんは外に駆け出していく。


 

 この村の暮らしになじみ、すっかり落ち着いた、俺たち。

 姫さんはお城の暮らしを忘れたみたいに、すっかり村の子になった。

 きれいなドレスは、婆さんが虫よけのハーブを挟んで大事にしまい込んでしまった。

 背も伸びたし、幼児言葉も少し治って、俺は「ねこしゃん」から「ねこさん」に昇格。

 紐に通して首から下げた、母上の指輪だけが昔を思い出させる。


 母上は砂漠を無事に越えて、帝国にいるんだろうか。

 父上たちに会えたんだろうか。

 身代金を払ってもらって、ローランディアに帰れたんだろうか。


 時々思い出して寂しがるけど、今はどうしようもないよな。



 だから、ねぇ、今日は何して遊ぶ?



「おいでよマリアン。俺、新しい罠を作ったからさ。

 森でウサギの通り道に仕掛けに行こうぜ」


 ミックは七歳の酒場の子だ。

 親父さんは店を継がせたいと思ってるけど、ミックは狩人になりたくて仕方がない。

 手製の弓やら罠やら作って、猟師の真似事。


「暗くなるまで森に居ちゃいけないよ!奥に入っちゃいけないよ!」


 婆さんが家の中から叫んだけど、ミックたちを追いかける姫さんの耳には届かない。


 やれやれ。


 俺は大丈夫だよって婆さんに尻尾を振ると、姫さんの後を追った。

 


 


 


 


 

 

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